第40話 アスレイの町。その1
ここはマスターフロア、ダンジョンの奥にある最後の部屋。
通称『みりあのへや』である。
「にゃん、にゃん、にゃん~!」
ミリアは幸運のダンスを踊り続けた。
あれから1週間、ダンジョンの魔力が0のまま、ダンジョンに侵入者がこない。
このままだと発電機がつけられない。
電気ない、何もできない。こまったと、ミリアは思った。
『無限に出し入れできる冷蔵庫も電気がないとただの置物だしのう、他のものもそうじゃ』
「なぜ侵入者が来ないのだ、こやつらの動く姿を早く見たいのだが……」
暗闇の中、レオニードは家電製品の説明書を読んでいた。長生きしてるだけあって知力が物凄く高い。すべての説明書を1週間足らずで暗記したのだ。
『今は初心者以下のダンジョンに成り下がったが、前にドラゴン注意の看板があったじゃろ。今は『みりあのいえ』ときたない字で読めん看板になったが、このダンジョンにはドラゴンがいると、皆に知れておる、ということは、このダンジョンは最深部まで探索済みということじゃ。冒険者にしたら、旨みのないダンジョンだと思われておる。英雄志願か自殺願望者ぐらいしかここには来んじゃろうな』
「あれから三百年も経ったのか」
『寝てるドラゴンを起こすバカはおらんじゃろうし。いや、ここにおったか、この辺りに出てくる魔物は、スライムや小動物ぐらいじゃし、わざわざこの森の奥まで人は来んじゃろう』
ため息をつく二人、マスターが無能なため苦労させられる。
もふもふは、侵入者が来ないかダンジョンを見回りしている。そもそも皆、忘れているかもしれないが、もふもふはグリーンドラゴンには及ばないが、獣族最強に位置するモンスターだった。ミリアにふざけた名前をつけられて、皆にワンコ扱いされている。
そして、アカネギとミリアはただ踊っているだけだった。アカネギはマスターフロアの最後の砦だから仕方がないが、ミリアは役立たずだった。またレオニードが戦闘に参加できないこともあった。レオニードはマスターフロアがせまくてドラゴンに変身できない。変身するとマスターフロアが崩壊してしまう。人型だと力が10分の1になり、英雄クラスの相手になると厳しい戦いを強いられるそうだ。また人型の容姿がばれてしまうとこれからの計画に支障が出るため、戦闘には参加しないことにした。
『まぁ、しかたない。それに足ができたのはいいことじゃ、近くの町ならドラゴンの飛行を使えば町まで一っ飛びじゃ。それにレオニードの財宝がある。これらを町で売り飛ばし、必要な物資を購入するのもよかろう。あと日持ちする食糧もな』
「われも、人間の街にいくのは久しぶりだ」
「まち、さかな、ある?」
『あるんじゃないかのう』
「うむ、たのしみ」
街へいくことになったミリア一向。
だが、もふもふだけがお留守番だった。
「クゥーん」




