第2話 異世界転移
夕日をバックにして、な~のですよ♪
松平英雄視点。
三毛猫のケルベロスと公園で散歩しながら、世界の経済情勢について語り合っていた。なぜ、俺が猫と語り合っているのか……
その理由は聞かないでくれ。悲しくなるだろう。
「なるほど、このままではダメなのか」
「にゃぁ~ご!!」
「そろそろ帰るか」
日が沈み、家に帰ろうかと思った矢先――
「にゃぁにゃぁにゃぁ~、にゃぁにゃぁにゃぁ~、にゃぁ、にゃぁ、にゃ、ぁ~~ん♪」
どこからか、黒ねずみさんのテーマソングが聞こえてくる。それにしても……。
「音程が狂っているぞ? どこのアホだ」
辺りを見回してもだれもいない。声が徐々に大きくなってくる。鼻歌だけじゃない。なんだ、このブレーキ音は? 嫌な予感がする。いや、まさか!! テンプレのトラックなのか!!
「いや、戦車だと!!」
黒い渦から現れた戦車――
『アクセル全開、ノーブレキーなのです、ヒャッハー!! なのです!!』
「ちょ、まぁ!!」
俺とケルベロスに向かって戦車が勢いよく突っ込んできた。痛みもない、そう一瞬だった。意識がなくなる寸前、少女の声が聞こえた。
『にゃあああああああ!! 殺っちまったのですよ!!』
そして――
俺の意識は……
完全に途切れた。
★★★
猫神様視点
戦車のモニターに見えないぐらい、血のりがべったりついてやがった。こいつは、やべぇ、と猫神樣は思った。とりあえず戦車から降りて現状を把握することにしよう。誰もみていなかったら、そのままトンズラしてやればいい。猫神様はそう思った。
トラックのドアを開けて、ぴょこんと飛び降りる。周囲を見渡してみると…….
「なんだあれは?」
「戦車が、突然、少年をはねたぞ!!」
「はやく、警察に!!」
「犯人は、あの少女なのか?」
「なに、あれ、ネコミミじゃん、コスプレ?」
「まじで、まじ? ありえないんだけど?」
「ひにゃあああ!! めちゃくちゃ人がいるのです!! こうなったら、もう、殺るしかないのです。ミュージックスタート~♪」
こんな事いいなぁ。出来たらいいな。あんな夢、こんな夢、いっぱいあるけど、みんなみんなみんな、叶えてくれる。ふしぎなポッケで、叶えてくれる。
『時をじゆうに とめたいな』
「ハイ ! ジカンテイシソウチー」
猫神様はドレスのポッケから、四角い機械、いや、時間停止装置を取り出した。これを使うことで、時を止めることができるのだ。決して、青いタヌキさんのパクリではないのだよ。
「ふっ、ヤレヤレ、遊びはこれぐらいにしてやるのです。ボタンを、ぽちっとな」
続いてポッケから、バカドボン光線銃を取り出した。この光線を浴びると、たりらりら~ん!!
知力が0になる恐るべき光線銃である。厳重な封印が施された天界の倉庫から、この猫神様はネコババしたらしい。
「さぁ、駆逐してやるのです! この世から…一匹… 残らず!!」
目撃者の口封じをはじめる猫神様だった。
「ふぅ~、これで一安心なのです」
目撃者は消えちまったのです。証拠は何もない。あとは……
「…………」
さきほどまで、騒いでいた者達は死んで、いや、倒れているようだ。その光景は見るも無残。口からヨダレをたらし、生きているのか、死んでいるのかさえ分からない。彼らの目は……死んでいるのだ。まるで、植物人間のように……
そして――
猫神様が戦車でひき殺してしまった哀れな者達に駆け寄ると、
うわぁ……こいつはやべぇのです。みごとにバラバラ、原型すらないのです。このままだとモニカにシバかれて、半年間、おやつ抜きは確定なのです。早く証拠を隠滅しないと……さっさと蘇生してやるのです。
猫神様はポッケから紅白がまざったボールのようなものを取り出した。これは召喚カプセルである。戦闘不能になったもの、または召喚獣を一度吸い込み全快後、新たに再召喚することができるのだ。
「ネコとニンゲン、げっとだZE!!」
猫神様はボールを使ってバラバラの死体を吸い込ませた。二人の遺体は何事もなかったかのように消え去った。これで証拠隠滅成功である。猫神様はニヤリと笑みを浮かべた。 そして、猫神樣は戦車を見つめる。
それにしても……人間の身体をあそこまで粉みじんにするとは、さすがオリハルコンボディーの戦車、天界の最先端技術で作られただけあって破壊力が抜群なのです。ゲームで言えばアレなのです。9999のダメージを100連コンボするぐらいの攻撃力、凄まじいのです。
カプセルを覗き込むと。
うーん、身体を修復させるにも、このままでは時間がかかってしまうのです。
「うん? げっ、こ、これはやべぇのです!!」
予想外の出来事が起こってしまった。召喚カプセルから魂のようなものが浮かび上がり、点滅し始めたのだった。
や、やばいのです。このままだと、魂が消滅して存在そのものが消えてしまうのです。困ったのです。このままだとバレる。
これじゃない、あれじゃない!!
ポッケからアイテムを探すが、何も見つからない。
そうだ、たしか、あれがあったのです。あらゆる天界の仕事をバックれるために開発した影武者。猫神型ホムンクルス、猫神マークⅡが、そう、天界の予算3分の1をネコババして完成させたアレがあったのです。本当はレアものの魂を素材にしないと初期ステが低く設定されてよくないのですが、まぁ、この際、仕方がないのです。でも、1体しか、それに魂が二つ……
にゃあああ!! めんどくさい。まとめて、いれちゃうのです。ぽいっと!!
よし、これで完成なのです。とりあえず、身体の修復が完了するまで、精霊神の世界に隠しておけばいいのです。見つかったから、見つかったで全てアイツのせいにして、バックれるのです。それ逝け、猫神マークⅡ、発進なのですよ。