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勇者の飼い猫になりました。  作者: 眠れる森の猫
第三章 ~ミリアの本~編
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第17話 ミリアの本 その3

『わしは、エミリアの本じゃ、なぜかお前さんの所に召喚されたようじゃ。おかしいのう』


 エミリアの本とやらが、俺に起こったすべての事を話してくれた。

 

 アホの猫神のせいで俺は死んだらしい。天界の女神にこってりしぼられた猫神は、コピー機の給紙係に戻されたとか。この惑星エルラシアの管理は、猫神から精霊神に戻ったらしい。


「わかった。いつ、もどれる?」


『さぁ~、神はルーズじゃからのう、早くて100年、遅くて1000年ぐらい?』


「むむぅ!!」


 はぁ~? ふざけんなっ!! くっ。


 こいつを踏みつけようとしたがやめた。エミリアの本から黒い触手が出ている。


 ……ぶらんぶらんと俺に見せつけるように、あれだけは、駄目だ。思い出したくもない。また、天国に逝かされる。これ以上あっちの世界にいくと、とんでもないことになってしまう。大切なアレだけでなく、男としての威厳、俺の存在そのものか消えてしまう。


『ほぉ~、わかっておるようじゃな。どんな結末になるかを、意外とお主は物分かりがいいようじゃ。お主がわしを踏みつけたせいで汚れてしもうた。これでわしを丹念に磨くのじゃぞ』


 ハンカチが俺の前に突然現れた。空中にふわっと浮き出し、俺の手元に落ちていく。これを手に取れというのか? このまま従えと言うのか。


『ほぉ、わしに逆らうと言うのか?  女の喜びというものを教わりたいようじゃな。ワシのコレにおねだりする姿、もう一度拝ませてもらおうかのう。ほれほれ!!』


「くっ!!」


 なんてことだ。俺は、しゃべる国語辞典より格下なのか。これを手に取れば、上下関係がはっきりさせられる。屈辱だ。


「ち、ちきしょー!!」


 俺は、ハンカチを手に取った。


 エミリアの本をフキフキしている。俺は奇麗好きだからな。決してこいつに屈したわけではないんだぞ。本の手入れをしているだけだからな。本当だからな? 

 ところで、こいつは、いつになったら天界に戻るんだ。さすがに腕が痺れてきたぞ。


「ねぇ、かえろ、じしょ、かえろ、はやく、かえろう!!」


『ふむ、戻れんのう。どうしてかのう』


「はやく、もどる、いえ、かえる!!」


 俺のかわりに猫神を立派な本磨き職人にでもしてやってくれ。


『それがのう。どうやら、あの女狐のせいで戻るに戻れんようじゃ。おぬしに良い知らせがある。喜ぶがいいぞ、エミリアからおぬしへ、継承の儀が行われたようじゃ。人間の世界で言えば遺産相続かのう』


「むむっ!!」


 遺産相続、な、なにを言っているんだ。


『簡単に言うと、もれなく、わしがついてくるんじゃ。うれしいじゃろう?』


「な、なんで~!?」


 俺がこいつのめんどうを見ろと言うのか、相続拒否だ。というかいらん。こいつがいたら俺は、どうなるんだ。このままでは本磨き職人になってしまうではないか。断固として断る。それに相続も何も俺と猫神様は、なんの関係もないはずだ。


『異世界に来て、何度も死んだお主じゃ、もう話す言葉もカタコトになっておるし、まぁ、アホになってきておるから仕方がないのじゃろうが、それに頭が整理できておらんじゃろう? この鏡で自分の姿をよーく、見てみるんじゃな』


 エミリアの本から特大の鏡が出てきた。

 こいつは青いタヌキの親戚なのだろうか。すごく気になるのだが、まぁいいだろう。

 

 鏡を覗いてみると、年齢は十五歳ぐらい、三毛猫の耳が生えており、年齢の割には胸もそこそこ大きい。きめ細やかな白い肌、薄いピンク色の唇、誰もが振り向いてしまう、いや、見惚れてしまうほどの美貌をもっていた。でも、なぜだろう、まったくもって魅力を感じない。俺が女になってしまったせいなのか。


『お主の身体は、エミリアそのもの、血肉が同じ。クローンってやつかのう。お主はエミリアの姉として登録されておるようじゃ。実際、クローンは天界でも違法行為に当たるのじゃが、あの女狐、知らぬふりをして、これを狙っておったんじゃろうな。それに、エミリアの事じゃ、口車にまんまと乗せられて契約書にでもサインしたのじゃろう。今気づいたのじゃが、少し前まで、わしの名前はエミリアの本じゃった、それがミリアの本に書きかえられたようじゃ。そうそう、お主が飛ばされた惑星エルラシアでは英雄のことをミリアと翻訳されるんじゃ、だから、わしの名前がミリアの本になってしもうたんじゃな』


 半信半疑だったが、今の俺の姿はアホの猫神様になってしまったのか、頭が残念な美少女、おまけに、エロ本までついてくる。くそ、俺はどうすればいいんだ。このままだと本職人になってしまう。隙を見て、こいつを燃やしてしまおうか?


 ライター、マッチはどこにある。ポケットにはないのか。もやすものは、どこだ。くそっ、考えるんだ。


『英雄よ、さっきから何を必死に考えておる。頭を抱えてまで、まさか、お主、わしの相続を拒んでおるのか』


「き、きのせい、なにも、かんがえて、ない」


『たしかにボケーっとしておるのう。間抜けヅラになっておる。まぁ、それならいいんじゃ』


 いつかお前を燃やしてやるからな。貴様の燃えカスで焼き芋を焼いてやる。楽しみにしておけよ。


『そうそう、わしは天界の神器の一つ。ちっとやそっとじゃ壊れんぞ。おぬしの住んでおる地球が大爆発する程のエネルギーでやっとこさ、傷がつく程度じゃ。わしが本気を出せば、あの変態女神とて無傷ではすまんじゃろうな。まぁ、人化すると疲れるしのう。そういうことで馬鹿なことを考えると、どうなるか分かっておろうな。ほれほれ!!』


 き、貴様は化け物なのか!!


「心を込めて磨くんじゃぞ、おぬしも、あやつと同じ不老不死じゃ、永い付き合いになるかもしれん」


「ち、ちきしょー!!」


 どうやら、エロ本がついてくるようだ。頼む。キャンセルさせてくれないか?

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