第12話 幸せをつかむために
クライシス視点
「う~ん、こまった、でも、ぅ~ん」
ミリアは、何かを言いたそうにこちらを見てくる。
それが何日も続くことになった。
「ミリア、どうしたんだい? 何か言いたいことがあるなら僕に……」
「な、なんでも、ない」
「ミリア、言ってごらん」
真剣な目で見つめる僕に負けてしまったのか、ミリアは雑誌を僕に見せてきた。
「これ、ほし……」
だが、タイミングよく手紙が僕の手元に……。
「むっ、しろい、かみ? とんで、きた。まほう?」
これは師匠からの手紙、やっとなのか。
僕は、手紙の封を切り手紙を読んだ。
「…………」
この人に頼るのが間違いだった。
「ふぅ~」
僕は、ため息をついた。
話が中断してしまったようだね。
「ミリア、すまない、それは?」
「くら、たのみ、ある」
ミリアが、僕に頼み事とは珍しい。今回が初めてだ。彼女は何も欲しがらない。我がままを言わない。僕に対して遠慮しているのだろうか。だが、そんな彼女も魚の時だけは目の色がかわる。大きな魚を見るとすぐに飛びついてしまう。そんな可愛い君の頼みだ断る理由はない。
「ミリアが珍しいね。頼み事とはなんだい?」
「これ、ほしい、ぎゅーどん」
僕に雑誌を見せて、あるメニューを指さした。
「ぎゅーどん、知らない食べ物だね。いや、こ、これは、だが、しかし!!」
これは伝説の料理。
マタタビスペシャルじゃないか。
名前 マタタビスペシャル
レア度 ★★★★★
食材 レッドドラゴンの肉
キングトータスの肉
キングゴーレムの欠片
ブラッディスライムのゼリー
デスツリーの木片
説明
五つ星の伝説の料理、この料理を完成させた者は伝説の女神だけだと言われている。レッドドラゴンの肉をふんだんに使ったねこまんまである。ドラゴン族最強のレッドドラゴンに挑んだものは、勇者ですら返り討ちに合い、戻ることができなかった。三代目勇者ゼノスの消息は未だ不明である。まさに命がけの料理である。この料理を食べたネコミミ族は興奮状態におちいってしまい、発情した淫乱メス猫状態になってしまうのだ。その効果は1週間持続する。これを欲しがるネコミミ族は、子種を求め求愛の行動をとっているといえるだろう。
注意:この餌を与えることは、1週間、ヤル覚悟、精力とスタミナが必要である。
☆☆☆
「ほ、本気でこれがほしいのかい?」
「うむ、くら、ほしい。だめ?」
僕にみせつけるように、ミリアは、両手でお腹をナデナデしている。
これは、お腹がすいてることをアピールするミリアの癖なのだが。
まさか、君は、僕の子供を……。
だが、クライシスは違う意味でとらえてしまったようだ。
僕は真剣な眼差しでミリアを見つめた。
「ほしい、くら、おねがい。わたし、なんとか、する、ぜったい、めいわく、かけない」
(牛丼が食べたい。材料さえあれば、自分で、いや、あとはこの辞書がなんとかする。迷惑はかけない)
ミリアは、懇願するかのような目で僕を見つめている。
「み、みりあ……それほどまでに……僕のことを……」
クライシスには、あなたの子供を育てたい。私一人でも育てる。迷惑をかけないから……お願い……と懇願しているようにしか見えなかった。
『うん? ミリアよ。なにをしておるんじゃ? 勇者が……これはまた、真剣な表情をしておるのう。うむ、おかしいのう。全く反応がないぞい。大丈夫かのう?』
「おなか、すいた。めし、ようきゅう!!」
『そか、よかったのう』
「…………」
ミリア……男としてここまでされたら僕は引くことができない。
これからすることは君を不幸にしてしまうかもしれない。
だが、もう我慢できない。
ミリアを安心させるように僕は微笑んだ。
「むむぅ? どした、くら?」
「僕を待ってていてくれ、必ず君を迎えにいく」
僕は勇者であってもただの人間だ。
恋をするのも自由だ。
僕とミリアの恋路を邪魔するものは、たとえ神であろうと、教会であろうと、大国であろうと、森であろうと、この正義の刃ですべてを切り裂く。
ミリア、子供は二人で育てよう。
そうだね、まずは素敵な教会を探そうか。
「うん? そか、いってら」
『すごい闘気じゃのう!! おぬし、一体、何を頼んだんじゃ』
「ぎゅーどん」
『この世界に吉野家なんてあったかのう。勇者も食べたいんじゃな』
こうして、僕は旅に出た。
ミリアとの幸せをつかむために……
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
バカ弟子へ
協会のバカ共を説得するのは無理だ。
あの首輪が反応したことは魔物の証明なんだ。
それを覆すことはできん。
あいつらは頭が固いアホだ。
あいつらにいうことを聞かせたいなら、力で訴えろ。
俺なら地属性最強魔法メテオブレイク(巨大隕石)を協会本部にかます。
力が正義なんだよ。
それより女に構ってないで仕事しろ。
引退した俺がなぜおまえの代わりに働かねばならん。
なにさぼってやがる。