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勇者の飼い猫になりました。  作者: 眠れる森の猫
第二章 勇者クライシス編
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第11話 魔物恋愛禁止令

クライシス視点


「ねぇ、めし、まだぁ?」


「今日もミリアの大好物のお魚さんだよ」


 目を覚ましたミリアは普段と変わらない、いつも通りの彼女に戻っていた。


「おさかな!!」


「身体はもう大丈夫なのかい?」


「うん?」


 ミリアは何ごともなかったかのように、美味しそうに魚をたいらげていた。


☆☆


 そして――

 あれから、1年が過ぎた。

 しばらく勇者としての責務を放棄、いや、休みをとり、彼女の動向を見守ることにした。

 相変わらず、ミリアは元気いっぱいだ。

 もう大丈夫なようだね。今日も僕に飛びついてきた。これは僕と彼女の日課のようなものだ。


「くら、すき(あり、死ね)!!」


 あはは、かわいいな。

 ほら、ミミをもふもふしてあげよう。


「はにゃ~、ミミ、だめ!!」


「ははは、だめだよ、ミリア、お仕置きだよ」


 ミリアのミミをさわってあげると、気持ちよさそうにしている。ミリアはとうとう眠ってしまったようだ。


『うむ、感じすぎて気絶しておるのう』


 君と出会えて本当に幸せだ。

 あの時からだ。

 僕は、何かの力を得たようだ。

 時を止める力なのか。

 まるで時が止まったような感覚だ。

 いや、止まっているのか、この力は一体……

 夢見の力が強くなったのか。


★★★


「むむぅ、わたし、おとな、おもちゃ、もう、あそばない」


 ミリアに特大のねこじゃらしを振ってあげた。顔をつーんと、させてはいるが、ミミと尻尾は嬉しそうに振っていた。


「にゃあああぁ!!」


 ミリアは結局飛びかかってきた。やはり、我慢できなかったようだ。


『どこが大人じゃ』


 だが、この幸せは長くは続かないだろう。

 そうだね。今日も君の写真をとらせてもらうよ。

 僕は時を止め彼女の写真を1枚とった。

 次はこの洋服にしようか、いや、このパジャマも捨てがたい。

 これで何枚目になるだろうか。

 この写真も僕のコレクションに加えておこう。


「はずす、くびわ、くさり、かんきん、だめ!!」


 首輪をはずしてほしいようだね。ミリアは顔をふくらませて怒っているようだ。でも許してくれ。それはできないんだ。首輪は勇者の仲間である証、それに鎖を外すと君の居場所がばれてしまう。首輪は君の身分を守るため、鎖は君の存在を隠すために必要なんだ。

 君の存在に気づいた者がいる。魔術にたけた者が君を狙っている。だいだいの予想はついている。だが、相手は大国だ。だが僕は師匠とは違う。出来れば穏便にすませたいのだが、今はこの幸せを満喫しよう。


★★★


 深夜0時を過ぎた頃、彼女の部屋から物音が聞こえだした。どうやらミリアが目覚めたようだ。僕は気配を消し、彼女の動向を見守ることにした。


 すると彼女は辞書に向かって独り言を呟き始めた。


「くら、けっこん、むり~?」


『結婚じゃなくて決闘じゃろう。あやつは真の勇者に目覚めたからのう。はっきりいって勝てん、無理じゃろう?』


「うううっ」


『くやし涙まで流しおって、なぜそこまでして挑もうとするんじゃ?』


「ほこり、たいせつ、でも、わたし……できない」


勇者イケメン)に負けたくないという男のプライドがあるかもしれん。だが、挑んでも力の差は歴然じゃぞ。勝てんじゃろう。 ……それにもう、おぬし、自分が誰だか分からんぐらい死んでおるじゃろ。もう、ただ、飛びかかるだけの毎日ではないか。あれからもう1年じゃぞ』


「ひぃく、ひぃく、ううっ」


 ミリア、涙まで流して……


 僕と結婚したい、でも勇者の誇り、大切、できない……まさか、君はあのことを知ってしまったのか、だが、あれは……。


「やはり、かなわない、あきらめる、ひと、ちがう、く、くら……、ころされる。だめ、かなしい」


『あれはもう、人を超えておるからのう。神の代理、いや、精霊神(仮)に喧嘩を売るようなもんじゃ。挑んでも瞬殺だからのう。それと殺されたのではないぞ。自爆したんじゃからな。今日も、飛びかかったのはいいが、柱にぶつかって死んだじゃろ。もうあきらめるんじゃ。まぁ、悲しんでも仕方ない。何か違う方法を探すんじゃな。この際、飼い猫でもいいではないか。猫神の迎えが来るまで、食うには困らんぞ。あやつが忘れておらねばいいのじゃが』


「うううっ」


 あきらめる、ひと、ちがう。人種が違う。

 僕が殺されると悲しい? 

 やはり君は、知ってしまったのか、あの本を読んでしまったんだね。

 金庫に保管していたはずが、僕がうっかりしていたのか。

 ミリアのベッドの側に落ちていた本、それは絶版された本、禁書と呼ばれるものだった。


 金庫を発見したミリアはボタンを押して遊んでいた。すると金庫が開いてしまった。覗いてみると一冊の本が置いてあった。最近、暇を持て余したミリアは読書をしはじめたのだ。


 だが、文字が読めない。だから絵を見ていた。特にお魚さんの絵本がお気に入りだった。しかし、この本は絵もなく文字だらけ、ミリアは読むことができず、あきらめてしまった。そのことをクライシスは知らなかったのだ。


 禁書に書かれていた内容とは……

 昔、5代目勇者、ミストラルが1匹の魔物に恋をした。


 ミストラルは勇者として、してはいけない裏切り行為を行った。彼女を討伐しようとする者を次々と殺していったのだ。

 

 のちに6代目勇者ルイスによりミストラルと魔物ともども粛正されてしまったのだ。


 5代目勇者の名前は抹消されており、知る者は、ほとんどいない。のちに勇者協会より魔物との恋愛、結婚は禁止されたのだ。


「くら、すき(がない)……だめ(だ)……」


『そもそも、攻撃するとき、なぜ、「隙あり」と叫ぶんじゃ? お主がバカなのは知っておったが、あやつには、隙がないからのう。鎖もあるし考えてみると逃げることもできん。こまったのう。監禁END決定じゃ』


「ミリア……僕は……」


 このままだと君とは一緒になれない。

 ネコミミ族は魔物ではないはずだ。

 君が魔物でないことを勇者協会に説得する。

 時間がかかるかもしれない。

 きっと大丈夫だ。

 まず、彼に頼ることにしよう。


 そして、僕の師匠である賢者ガンダルグに手紙を送ることにした。彼には頼りたくなかったが、勇者協会について、彼が一番よく知っているはずだ。 

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