借金令嬢は返済に生きる 新たな借金は突然に
その頃、ローラン子爵家では
アーサーの元に書類を持った人物が訪れていた。
慇懃な挨拶をしたその人の持ってきた書類を見たアーサーの手が震えていく。顔が蒼白になる。
「あいつめ。どこまで邪魔をするんだ」
「ご理解いただきありがとうございます。ご覧のように、ローラン子爵家の森林公園の管理移譲書類に、お父様のローラン子爵の署名がございます。
期日までに解約金をご用意いただけなければ、森林公園の全ての事業をわがリーマント商会に譲渡される事になります。
ご安心下さい。わが商会がこれまでの完成したものをきちんと管理します。途中の物も引き継いて完成させます。ローラン子爵家子息、アーサー様が行なった商会、組合の方には撤退をお願いします。では、期日である10日後、また参ります、」
「3億リブル、かき集めなければ!」
アーサーは動き始めた。
まず、父の部屋へ行く。
父は部屋で酒瓶を抱えて汚いベッドで寝ていた。
足枷をたぐる。
一部が簡単に外せるようになっていた。輪っかの1つが緩んて取り外した可能になっている。
「忙しくして、油断した。外して遊びに行ったな」
父を蹴る。
ベッドから落ちた父親がアーサーを見て、
「お、久しぶりだなあ。上手いことやってるんだってな!」
「お前、自分が何をしたかおぼえているか?」
「何もしてない。大人しく部屋で寝てるだけだ」
「じゃあ、この酒瓶はどうした?」
「あー、仲良くなった親切な人がくれたんだよ。うまかった。」
「これに見覚えは?」
アーサーが書類を父の目の前に突きつける。
「俺の部屋から、子爵印を持ち出したな!」
「はあ?あー、あれは俺のだ!俺が子爵だ!持ち出して悪い事はない。」
「自分が何をしたか、わからないんだな。」
アーサーは確認する。
「何枚に署名、捺印した?これの他にもあるのか?」
「1枚だ」
「絶対に1枚きりか?」
「ああ」
アーサーはこれ以上聞く必要はなかった。父親の腕を踏みつけた。ぼきり、と音がした。父親の悲鳴。
かまわず、アーサーは父を蹴り、もう一方の腕も折った。
「早くこうしておくべきだった」
アーサーは父であった人の部屋を出た。すべき事が山程ある。
アリシアとケイト、ケイトの親を呼んだ。
片っ端から借金を申し込みにそれそれが動く。3億リブルをかき集めなければ!
アリシアは王都へ立つ。長期休みで帰宅したばかりだったが、とんぼ返りだ。
まずはリッチモンド伯爵家。
祖母が全面協力を約束してくれた。伯父と伯母も出来うるだけ金策をして、ローラン子爵家のアーサーに信用貸しをすると言ってくれた。
しかし、リッチモンド家は今までローラン子爵家に援助し続けている。それ程余裕は無いだろう。
アリシアは、サンフォーク公爵家を訪ねた。
使用人の門に立ち、エリィを呼び出してもらう。
アリシアはエリンに、今のローラン子爵家のトラブルを伝えるだけのつもりだった。