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正しい幼女の育成法   作者: 青沼 サイ
幼年初期編
11/106

絵本を読んであげよう

テオ達は3区から、王立図書館がある2区へと移動した。


王立図書館は一般的な小説から各分野の専門書なども豊富に取り揃えている。

テオ達もたびたび魔法に関する資料を探しに利用する。


しかし、今日のテオ達は教育書関連コーナーにいた。

テオはざっと棚にある背表紙のタイトルを確認していく。

“初めての幼児教育“、“正しい教育法“、“貴族の行儀・作法“、“淑女のマナー“、“レディの嗜み“ 等々。

何冊かを手に取り、パラパラと中身を見ていく。


「とりあえず、2・3冊適当に借りてくか?」

同じように本を流し見しているルーク。


「そうだね。」

テオは3冊棚から選び取り、貸し出しカウンターへと向こうとし、リアがいないことに気づく。


「ちょっと、あの子は?」

「ああ、さっき児童書のコーナーで止まってたな。」

慌てているテオとは対象にのんびりとした調子のルーク。


児童書の棚は出入り口付近だ。

ということは、入ってきてすぐにリアはテオ達とは別行動していたことになる。


(言えよ!)


急いで児童書のコーナーに行くと、リアは棚の前で座り込んでいた。

絵本を開き、集中したように読んでいる様子でテオが近寄っても気づかない。


「そろそろ帰るよ。」

ハッとしたようにこちらを見上げ、持っている絵本を戻そうとするリア。


「戻さなくていいよ、リアちゃん。それ読みたいなら借りてこ。」

ルークがそう声をかけるとリアは動きを止め、

「かりる?かわなくて、いいの?」

とこちらを見ながら不思議そうに言った。


(図書館に来たことないのか?)


テオは図書館の仕組みを教えてあげる。

「ここは図書館だからね。ここにある本は借りて、後で返せばいいんだ。」

「おかねは?」

「いらないよ。全部無料(タダ)だよ。」

「ぜんぶ、ただ・・・。」

リアは本棚に戻しかけた絵本を再び手に取った。


「その一冊だけでいいの?あと2、3冊くらいいいよ?あ、これ懐かしい!これ俺のオススメ!」

ルークがはしゃいだように1冊の絵本を棚から取り、リアに手渡す。


「懐かしいなー、これ!ちっちゃい頃、よく読んでもらったなぁ。」

横から覗き込んで、絵本の表紙を確認するテオ。


「知らない絵本だな。」

「貴族の間じゃあまり知られてないのかな?」

「いや、というより・・・僕は絵本を読んでもらったことなかったかな・・。」


脳裏に自身の薄暗い幼少期がよぎり、少し気分が沈んだ。


「じゃあ、今読めばいいんじゃね?」

ルークが手にしていた、色とりどりの恐竜が描かれた絵本をテオへと渡す。


「リアちゃんも知らないだろ?テオが読んでやれば、ちょうどいいじゃん。」

彼はいつもの底抜けに明るい笑みを浮かべている。


「テオ、ほん、よんでくれるの?」

リアが小さな声で大きな目を見開いてテオを見上げている。


「え?ああ、まぁ、別にいいけど・・。」


一気に顔を明るくさせたリアは、棚からさらに絵本を選んでいる。


彼女がそうして追加の絵本を選び終わる頃には、テオの沈みかけた心は不思議と元に戻っていた。

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