善意と悪意、賞と罪。
「遂に最終決戦か、大丈夫あれだけイメージトレーニングしたんだ。行ける」
相手はマグナ・カルタ。その見た目は、まるで炎で燃やされた人間の様な感じで、大きさは高さ50メートル位か? どっちにしろめちゃくちゃ大きい。しかし真ん中に歪んだ黒? 見たいな物がある。なんだあれは、精神が歪んでいると意味か? だが、考えていても仕方が無い。
「こちらから行かせてもらうぜ! 消火せよ、ウォーターフォール!」
ウォーターフォールはその名の通り、水の壁の様な物だ。もちろん、マグナ・カルタより大きい範囲に放った。
「どうだ、やったか?」
しかしこの世はそう上手く行かない物だ。
「ん!? 全くの無傷? どう言う事だ。大概の生物は即死だし水に耐性を持っていたとしても、かなりの致命傷の筈だ。それだけ硬いと言うのか? いや特にシールドも見えなかった。あれだけの火力を無傷で耐えるなら、しっかり肉眼でも分かるほどのエネルギーが必要だ」等と考察していると、
「どんなにあなたが魔法で攻撃しても無駄だ」
「無駄? どう言う事だ?」
「それはな、大悪魔マグナ・カルタはあんたらが、魔法を使い、空間を歪ませると、その歪んだエネルギーが俺の所に来て俺を強くする訳だ」
「つまり魔法の"代償"と言う訳か」
「そうだ。あなたから見たら、そうなるな、あなたが魔法を使えば使うほど、俺は強くなり倒すのが困難になる。魔法をあなた達が使い続けている間は俺は強くなり続け、有り余ったエネルギーが"災厄"としてあなた達の所に帰ってくる訳だ」
「じゃあ、俺が今まで猛獣を倒した時も、幻毒の竹林でシールドを展開していた時も、俺が善意でボランティアで怪我人の治療をしていた時も、お前は裏でどんどん強くなり続けたのか?」
「その通りだ」
「それじゃ、俺が善意を貫けば貫くほど、世界のどこかの人が俺の善意によって生まれた代償によって災厄で悲しんでいたと言うのか?」
「そうだと言っている。何度も言わせるな!」
「違う! 俺は病気で苦しんでいる人の為に活動していただけなんだ!」
「あるかもしれないが、大部分は違う! それは表の事だ! 事実、裏ではあなたの"善意"で苦しんでいる人がいるんだ! あなたは表の善しか見ていない馬鹿だ! それに、俺を創り出したのはあなたじゃないか」
「どう言う事だ?」
「だからあなたが怪我人の治療したから、その魔法の歪みが俺が生まれたのだ。だから俺から見たらあなたは父親で、あなたから見たら息子と言う訳だ。だから俺はあなたを殺さない。そんな親不孝な事はしない。しかしあなたが俺を殺すと言うならそれは仕方ない。それを受け入れる事になる。しかし今のあなたに俺は殺せない。何故ならあなたは魔法以外の攻撃方法が無いからだ」
「そ、そんな、俺は今まで表だけの善意で人々に災厄が起こっている事も知らずに善意、善意と、何も考えずにやり続けていたのか? これを善意だと思ってやって来た事の結末なのか? これじゃあ俺は重罪人ではないか」
「そうだなあなたは重罪人いや超重罪人だな」
そうして俺は膝を着き落胆した。自分が今までしてきた事を憎み、今までやって来た善意とは一体なんだったのか? いや善意とは一体何なのかをしばらく考える。堕落したこの脳で、考え続ける。
「そうか俺はそんな事をしていたのか、教えてくれてどうもありがとうマグナ・カルタ」
「俺も役に立てて嬉しいよ父さん。これが原因で俺に向ける殺意が無くなれば更に嬉しいよ父さん」
「そうか息子よ」
そうして俺は帰路につく。
目的を達成する事無く、そして新しい目的の為に。