正気を失った猛毒との闘い(前編)
歩き初めて、1時間くらいだろうか、
「来たな。幻毒の竹林」
幻毒の竹林。その名の通り中には幻毒と言う感染すると幻覚、幻聴などの症状を引き起こす危険性がある毒がたっぷり充満していると言う。
「考え続けても仕方ない。あまり時間も無いし、問題は中に入ってから考えよう」
無策に幻毒の竹林に入ろうとする。
これ性格は、我ながらいい性格だと思う。
どんな時代も、楽観的思考は助けられる筈だ。
(もちろんやり過ぎは良くないが)
竹林の入り口には結界石と言う物がある。
結界石とは竹林内の幻毒が外に漏れ出てこないように結界を張っている。特殊な石だ。
「結界石にそっと触れて、結界石の影響を1時的に弱めてその隙に入ろう」
もっといい方法あると思うが、今はそれしか浮かばない。
「結界石に触れる前にシールド展開しておこう」
結界石の影響が弱った瞬間、竹林内の幻毒が大量に漏れ出てするかもしれない。
結界石に触れる。結界の効果が弱まる。
その隙に入った。
(もちろん、幻毒が漏れ出てくる事はなかった)
竹林内の空気は目に分かる程の紺青色だ。
「空気が重い。それだけ汚染されている証拠か?」
幻毒の竹林を歩いていて、気づいた事が何個かある。
1つ目は、基本的には、何も起こらない。
(当たり前と言ったら当たり前なんだが)
2つ目は、空気が重すぎる。汚染されているせいか、空気の密度が高くなっているのだろか? 歩く時に、少し疲れる。
ただ基本的には何も変わらず、空気が重く、歩く時に疲れるのと、シールドを展開し続ける必要があって疲れるが、その程度だ。
「なんだ? 冒険の最初の関門は、簡単って言うがお約束っか?」
なんて脱力した感じで、歩いていると、
カサカサと物音がする。
ファントムオオサソリだ。
「なるほど、元々毒を持っているから幻毒の影響を受けないと言う訳か、なるほど」
敵なのに何故か感服する。
(誰にでも感服してしまう性格だ)
ファントムオオサソリは、そこらのサソリとは桁違いに強い。
ファントム型なので超幻毒だ。この手の超幻毒は半永久的に体力を奪われ続けられる、感染呪術だ。
それに、ここは幻毒の竹林だ。幻毒の毒も持っているかもしれない。刺されでもしたら一溜りもない。
だが、今はシールドを展開している。
このシールドはそう簡単に破れない筈だ。
ファントムオオサソリに右手を向けて右の手のひらに意識向けて、放つ。
「燃えろ」
「ん?」
何故か火炎が放たれない。
原因はすぐに分かった。原因はシールドだ。
俺のシールドが硬過ぎて、俺のシールドよって意思が大憲章に届かない。魔法を使うには意思を大憲章に伝え、空間を変化させる必要がある。
まさか能力の高さが仇となるとは予想もしていない。
「攻撃するには一度シールドを解除しなければ攻撃出来ない。だがしかし、シールドを一瞬でも解けば幻毒が大量に入って感染する可能性が非常に高いと言う訳か、詰んだな」
だからと言って走って逃げるのも現実的では無い。なんせここから出口まで30キロもある。そんなことろまで全速力で走ってたら、出口の前でバテてしまう。それが原因で、シールドが展開出来なくなるかもしれない。
「やるしか無いな。シールドを解除!」
次回へ続く。