57 師匠強い
佐久間くんは、一目見てわかるぼっちです。
「肌が青白いから部屋からほとんど出ることはなくて、もちろん友達なんて一人もいない。死んだ魚みたいな目はすっごく疑り深そうだけど、人と接すること自体が少なくて優しさってものに慣れてないから、ちょっと優しくされるところっといっちゃいそう。笑顔の詐欺師には気をつけてね? うーん、後は・・・・・・顔に表情がないからおじいちゃんになったらほっぺた垂れそう! そんでもってずっと一人ぼっち超かわいそう!」
「・・・・・・やり方はもうわかったな。慣れれば楽しいぼっちの一人遊びだが、小説のネタ探しや設定作りにはもってこいだ。後は実践あるのみ。さあ、行け我が弟子よ! 妄想を爆発させて来い!」
「え~、感想は~?」
「悪くはないが、まだまだだ。その程度、僕を一目見れば誰でもわかる事実を羅列したに過ぎない。もっと腕を磨くんだな」
「師匠は厳しいなー」
とか言いつつも笑顔の佐々。道が示され嬉しいのだろう。
「それじゃあ、さっそく行きましょう!」
「おう、がんばれ。駅前がおすすめだ」
「なに言ってんですか。師匠も一緒に」
「行かんわ! やり方はもう十分理解しただろう。なぜ僕が行く必要がある!」
「だって、いくら妄想しても、それが小説のネタになるかわかんないじゃないですか。やっぱりそれを聞いて、感想言ってくれる人がいないと」
「だったら、目についた人物についてストーリーを書いて提出しろ。設定の箇条書きでも構わん。ノルマは一〇人。ハイ解散」
「ダーメー! 行くのー、師匠も一緒に行くのーっ!」
立ち去ろうとする僕の腕を、ものすごい力で引っ張る佐々。情けないことに僕の腕力では振りほどけそうにない。
「ええい子供かお前は! それくらい一人でできるだろう!」
「ダメー! ほら、私かわいいし胸おっきいから一人でいたらナンパされるかも。 ううん、確実にされるね。そりゃもう入れ食い状態だよ! そんな中妄想なんてできないよ!」
「知るか! 自分でなんとかしろ!」
「それに街に独りぼっちとかありえない! しかも駅前! あんな所に何時間もいたら超寂しいやつじゃん! 約束すっぽかされた系じゃん! 師匠とは違うんだよ⁉」
「ふざけるな! そもそも約束するような友達がおらんわ!」
「うわーん、師匠に見捨てられたー。私捨てられたんだー」
「人聞きの悪いことを言うな!」
「いいや言うね! 教室で言うね! 泣き叫ぶね!」
「ああ、それは別に構わない。どうせぼっちだし、信じるやついないし」
「くそう! この人強い!」
次回、お出かけ。




