4 教室での柔道はマジヤバイ
『優等生は誰がために』を読んでいただけた方はお察しかもしれませんが、作者は主に投げ技や柔術系しか知りません。今回は柔道です。
僕はキレた。
原稿を机に叩き付け身を乗り出し佐々へと詰め寄った。佐々は驚きのあまり大きくのけぞり、どういった弾みか椅子からずり落ちてしまった。
「ば、ば、バカになんかしてないもん! ただちょっと、なんて言うんだろう? 師匠のあれがあれで・・・・・・ああダメだ、やっぱりなんて言うかわかんない・・・・・・」
佐々はとうとう頭を抱えてうつむいてしまった。その姿を、さっきの僕より無様だなと笑う気にはなれない。やってしまったという、後悔の念が湧きあがる。佐々がふざけてなどいないことは、既に承知していたはずなのに・・・・・・。
「ごめん、悪かったよ。その・・・・・・怒鳴ったりして。ほら、続きをするから椅子に座ろう。立てるか? 手を貸すぞ?」
差し伸べた右手を、佐々はガシリと掴んだ。その思わぬ握力に戸惑う。しかも掴まれたのは、なぜか手首だ。
「おい。佐々?」
「かかったな! この犯罪者め! だらあっ!」
犯罪者ってなにさ。言葉が口から出る前に、風を切る音が聞こえた。目の前には、不敵な笑みを浮かべた佐々がいる。体が宙に浮いているような気がする。いや、数瞬ではあるが、僕は無重力を経験したのだろう。
あれ? と思うと同時に背中に衝撃。後頭部に痛恨の一撃。後で聞いた話によると、佐々が放ったのは巴投げという技らしい。その仕組みを説明してもらったのだが、なんとも恐ろしい投げ技だった。そんなものズブの素人に、しかも不意打ちで、その上畳もないような場所で使うんじゃねえよこの野郎と僕はマジギレした。
・・・・・・とにかく、長くなってしまったが、状況を説明しよう。
今、目の前に立ち、床に大の字に伸びた僕を見下ろし悦に浸っているのは、小説家志望の少女・佐々翠であり、それを下から見上げているのが、彼女の言うところの師である僕、佐久間幸平である。
「・・・・・・犯罪者ってなに」
「女を泣かせるのはとてつもない罪であり、それをした男は例外なく犯罪者なのである!」
佐々は人差し指を天井に向けそう言い放った。
そして付け加えた。
「ママが言ってた!」
こいつ絶対スカートの中見えてるとか考えてないだろうな。そんなことを思いながら、僕は意識を失った。
暴力ヒロインはもう古いですね…。