32 叔母さん
さーやちゃんは乗りがいい。
そんな叔母であるが、なぜか佐々を受け入れているようで、呑気にお代わりはどう? なんて訊いている。
佐々も佐々でオムライスを平らげたばかりだというのに、じゃあいただきます~なんて言って茶碗を差し出す傍若無人っぷりだ。聞けば、僕の家の前で膝を抱えて泣いていたところを加代子叔母さんに拾われたらしい。
「まあまあいいじゃないの。おばさんってば、翠ちゃんみたいな女の子大好きなのよ。ほら、紗綾子ってば見ての通り不愛想でしょう? 一緒には遊んでくれるけど、物足りなくて」
「言われてるぞ紗綾子」
「マジないわー」
「言葉遣いだけギャルっぽくしてもねえ。それにこうちゃんは男の子なのに全然食べられないし。見てよあのお茶碗。中身なんて私の三分の一よ? 厭味ったらしいたらありゃしない」
「言われてるぞ幸平」
「どうせ僕は貧相で貧弱ですよ――って、お前は僕の父親か!」
「その点翠ちゃんはこんなにかわいい上に食欲もあって・・・・・・ホント、おばさんこんな子が欲しかった・・・・・・」
「いや、泣かないでよ。僕ら子供の立場ないじゃん・・・・・・」
「まったく誰に似たんだか・・・・・・」
「さーや⁉ お前今日はホントどうした⁉」
なんだかんだで怒涛の食事が終わり、僕と紗綾子と疫病神佐々は隣家である僕の家のリビングに場所を移した。
なにかと佐々にかまいたがる加代子叔母さんが鬱陶しかったため、あの場を逃げ出してきたのだ。しかも叔母さんがボケると紗綾子が悪乗りするという負のスパイラルができあがったため、その面倒くささは計り知れない。
「楽しいお母さんだったね。さーやちゃんがこんな風に育った理由がよくわかるよ」
「こっぱずかしいっす」
「貴様の超絶曲解などどうでもいい。さっさと本題に入れ。それともただ飯を食いに来ただけか? それもいい。むしろそれがいい。用事は済んだだろうさっさと帰れ」
「いや、それがその、なんと言いますか・・・・・・」
もじもじし始める佐々。イライラを募らせる僕。
「なんだ、言ってみろ」
「トイレならあっちだよ。ついて行こうか?」
「んん、後でお願い」
そこはお願いするのかよ。お前の方が年上だろう。
佐々はしばらくすると何を思ったかソファから床へと場所を移し、いつかの如く僕に向って頭を下げた。
「勉強、教えてください!」
こいつ土下座好きだな。
家族で楽しい食卓を囲むのって憧れます。




