31 突撃! 隣の朝ごはん
焦げた料理は食べない方がいいです。
とにかく腹が減って仕方がないので、遅い朝食兼昼食をとりに隣家へと向かう。思えば紗綾子がうちに来たのは朝食のお誘いのためだ。
「今日はさーやの手作りオムライスだよ。隠し味に炭素を加えてみた」
「はっはっは。それは焦がしただけだろう」
「違うもん。お兄ちゃんの健康被害を考えて、意図的に炭化させたんだもん」
「このあわてんぼさんめ。計画殺人にしても気が長すぎるってもんだ」
ふくれっ面をして見せる紗綾子をなだめながら、いざ隣の部屋へ。持つべきものは頼れる親戚とかわいい従妹だ。
「あ、おはよう師匠。さーやちゃんも。先にいただいてるよ」
そこにはやつがいた。
誰であろう、史上最悪の弟子・佐々翠だ。
「・・・・・・言いたいことは、いつもながら山ほどある――が、まずは貴様。なにを食べている」
「これ? 確か『さーやちゃんの手作りオムライス~台所の炭を添えて~』だったかな?」
「ふんーっま! ふんーっま!」
「お兄ちゃん落ち着いて。ここで手を下さなくても、数年後には決着がつくはずだから」
「そう・・・・・・そうだったな。そんな短期決戦を予期して作られた代物だったのか。まったく、末恐ろしい妹だよ」
「でも、この黒いところは食べないでねって、おばさんに言われて捨てちゃった」
「ハンガー! ハンガー!」
「お兄ちゃん落ち着いて。炭ならまた焼いてあげるから」
こいつは確実に己の手で始末せねばなるまい。そう決意した休日だった。
「それで、なにをしに来た? つまらないことを言ってみろ。その瞬間に首と胴が泣き別れだ」
「なに物騒なこと言ってるのよこの子は。せっかくお友達が来てくれたのに」
そう言って僕の前に茶碗を置くのは、紗綾子の母である佐久間加代子さんだ。
ふくよかな体に柔和な笑みを浮かべた様は、娘の無表情とは似ても似つかない。
しかしよくよく見れば、どう見ても親子にしか見えないほど顔の作りが似通っている。表情とは大事なものだと、この二人を見ていると実感する。
次回、佐々さんの目的が明らかになります。




