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3 スイコー

昔、誤字脱字だらけの小説を読んだことがあります。外国の本を日本語訳したからなんだろうけど、あれはひどかった。冒頭の佐々さんの小説といい勝負でした。

「ところで、なぜ戻ってきたんだ? さっきあんなに顔を赤らめて走り去ったくせに」

「だって、師匠の返事、待ちきれなくて・・・・・・」


 思わず動機が激しくなった。落ち着け僕の心臓。いくらこいつがそこそこかわいい上に上目遣いで頬を赤らめまるで恋文の返事を待ち受けるかのような態度をとっていたとしても、目の前にいるのは佐々翠だ。僕は顔を見られないよう背けながら、机に放置されたままになっている原稿を見やった。


 そうだ。原稿だ。「これ、読んでください!」と、佐々から押しつけられた彼女の原稿だ。


 途端に僕は冷静になった。言いたいことは山ほどあるのだ。例えばこれの感想とか。


「感想・・・・・・そう、感想だよ!」

「うんうん、感想だよ」


 この自信が一体どこからくるのか、まずそれが知りたい。


「まずはだ佐々」

「ほいな!」

「これ、推敲はしたのか?」

「スイコー? スイカの外国語版?」


 これを大マジで言っているのだから恐ろしい。


「推敲だよ推敲! 文章を練ること! 要は読み直して変な言い回しや誤字脱字を修正すること! やったのか⁉」

「ううん、全然!」

「だろうと思ったよ! 予想通りだよ!」


僕は深く深く溜息をついた。そんな様子を見て頬を膨らませる佐々。


「なんだよー。その、スイコー? ってそんなに大切なわけ? ちゃんと説明してくれなきゃわかんないよ」


 ・・・・・・そう、本当に佐々はわからないのだ。

 僕は佐々に椅子に座るよういいつけ、原稿を手に取った。彼女にもわかるよう順を追って説明をしなければならない。


「考えてもみろ。せっかくお金を出して買った小説が、日本語として成立しておらず、さらには誤字脱字ばかりだったら」

「あー」

「そんな読むことすらできない小説に、なんの意味がある? 作者だって、言いたいことを伝えられない。そんなものを世に出しても、双方不幸な結末にしかならないだろう」

「むー」

「アマチュア作家が賞に応募する場合も同様だ。自分の伝えたいことを、誰にでも理解できる文章にして、物語として完結させなくてはならない。そのために、推敲は避けては通れない道なんだ」

「わー」

「お前バカにしてんのか⁉」


次回、バトル!

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