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23 彼女の原稿③

お説教が続きます。

「だって原稿一つだけじゃ、師匠もつまんないでしょ? それに書いたのは中島だよ」

「ダチか! つまるつまらないの話じゃないの! 盗作はダメ! 絶対!」

「マジかー」

「大マジだ! 著作権って知ってる・・・・・・わけないな。要は最初に作品を書いた人がその作品の所有権を得るってことだ。コピペなんてしたら、一発でアウト!」

「でも作品はパクれって師匠が・・・・・・」

「あれは設定の話だ。まるごとそのままコピペしろとは言っていない。わかりやすく説明してやろう。・・・・・・例えば、勇者が魔王を討伐しに行くというストーリーがあるとする」

「王道ってやつですね」

「その通り。だがもし、仮にだ。この設定自体に著作権が発生したらどうなる? 勇者は一体なにをすればいい? まるっきり違う小説を書くなんてことは不可能なんだよ」

「確かにそうかも」

「つまり大まかな設定は他から借りる。細部は盗作にならない程度に作風を変える。これがいわゆるテンプレだ」

「うーん、難しい」

「そうでもないさ。さっきの例で言えば、例えば勇者を女に、魔王をイケメンにするっていうのはどうだ? そんでもって戦っていくうちに、ラブコメに発展する。どうだ? 勇者と魔王という設定はそのままだが、まったく違う作品になるだろう」

「さすが師匠! 天才!」

「・・・・・・わかっていないようだから言うが、今僕が言ったことを、お前がやるんだからな?」

「あちゃー」


 我慢しろよ、僕。


「話が長くなってしまったが、お前の作品に対する評価ははっきりって下の下、ど底辺だ。これは小説ではなく単なる落書き、読むだけ時間の無駄な代物だ」

「・・・・・・はい」


 再び萎れる佐々。こいつは普段からこれくらい静かな方がいいのかもしれない。


 見た目だけならそこそこいい線行っているだけに、口を開けば飛び出す残念発言と果てしない奇行が玉に瑕なのだ。


「ひとまずこれくらいにして、行くぞ」

「え、どこへですか?」

「お前が言ったのだろう。ジュースを奢れと」

「ジュース!」


 途端に元気になる佐々。現金なやつだ。


佐々さんは、こう見えて結構マジメです。

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