18 従妹の足を揉む
佐々さんは帰りました。
「うぅ・・・・・・今度は覚えているぞ。僕は佐々に殺されかけた」
「まあ、間違ってはいないよね」
リビングで目を覚ました僕は、例によって紗綾子の膝枕のお世話になっていた。毎回この幸福を味わえるなら、死にかけるのも悪くない。
「バカなこと言ってないで、さっさと起きてよ。足がしびれた」
「悪い悪い。お詫びに揉んでやるよ」
僕は体を起こすと紗綾子をソファに寝転がらせ、横に座った僕の膝の上に紗綾子の両脚を乗せた。紗綾子はなすがままにされケータイをいじりだした。
「おっと、パンツが見えそうだぞ。気をつけなさい」
「・・・・・・」
無視か。だがそれもいい。
なぜならお兄ちゃんはお前が本当は優しい子だと知っているからな。なにせ気絶したお兄ちゃんをソファまで運び、目が覚めるまで膝枕してくれたんだ。まったく従妹は最高だぜ。
僕は微笑みながら紗綾子のスカートの裾を直してやった。
「お兄ちゃん」
「なんだ? おお、一瞬天使がいるのかと思ったぞ、紗綾子」
「現実逃避はよくないよ?」
「・・・・・・だよなぁ~・・・・・・」
紗綾子の柔らかいのに張りがある太ももを揉み解しながら、僕は深く深く溜息をついた。
ついさっき、僕は僕を殺しに来たストーカー(大きく間違ってはいないのが恐ろしい)ととんでもない約束をしてしまった。
師匠? この僕が? よりによって小説の? なにそれ。
頭の中はさっきからずっとこんな感じだ。佐々の手前あんな大見得を切ってしまったが、僕にはなんの技術もありはしない。本の批評をしたのだって、せいぜい読書感想文がいいところだ。しかもあれ苦手なんだよね僕。書きたいことを書けってなんだよそれ。そんなことしか言えない教師は職務怠慢に違いないよと八つ当たりする。
しかしどんなに八つ当たりの被害者を増やそうと、現実の問題は解決などしてくれない。僕は頭を抱えた。
・・・・・・間違った。紗綾子の脚を抱えた。
「あ~も~どうしよ~」
「お兄ちゃん。手が止まってる」
「すみません」
どこまでもクールな従妹だ。
「ねえ、お兄ちゃん」
「なんだ? 次は腰か? 悪いがそろそろ僕の握力は限界だ。お前の脚は長いからな、使う力も半端ではないんだ。次は負担の小さい胸あたりにしてくれると助かるんだが。ああ、小さいといってもお前の胸がって意味じゃないぞ。だからあまり気にするな」
紗綾子は上体起こしの要領で起き上がると、僕に手を伸ばした。
ああ、殺されるかも。そう思いながらも僕は逃げない。かわいい従妹のすべてを受けとめる。それがお兄ちゃんだから。
「お兄ちゃん、さっきはよくできました」
さーやがデレた!




