13 彼女の目的
狂気と熱意。
「それで、佐々さん。なぜお兄ちゃんを師匠と呼ぶんですか?」
「はい。実は先週、教室で師匠が雑誌を読んでいるのを見まして。気になって覗き込んでみると、新人賞の中間発表のページでした。まさかと思いコンビニで立ち読みしてみると、そこに師匠の名前があったんです! 思わず買っちゃいましたよ!」
「コンナトキニ! オイサヤコ、イエノデンワニデテクレ! ボクハイマテガハナセナイ!」
「ふーん。そうだったんだ。よかった、新聞とかじゃなくて」
「新聞ですか? なんで?」
「クソッ、ナンデダレモデナインダ⁉ ケーサツハルスカ⁉」
「ほら、お兄ちゃんアレだから。どこかで通報されて、それで警察のご厄介に」
「そんなことないですよ! 師匠は立派な人です! まだよく知らないけど、きっとそうに違いありません!」
「買いかぶりだと思うけどなー」
「さーやぁああああああ!」
僕が詰め寄ると紗綾子はいつものすまし顔のまま見返してくる。どんな状況にあっても、そのかわいさは世界一だ。
「落ち着いた?」
「落ち着いていられるか! さっきの番号、あれうちの固定電話じゃないか! まんまと踊らされたわ!」
「お兄ちゃんって、なにかの雑誌に取り上げられたことあるの?」
「ああ? そんなことはこれまで一度も・・・・・・いいや、待てよ。そう言えば先週、小説の新人賞の中間発表があったな。そこに名前だけは載ってた。三次選考で落ちたけど」
「やっぱり!」
途端に佐々が身を乗り出し、テーブルまで乗り越えて、僕に詰め寄ってきた。
「お願いです! 私の師匠になってください! 師匠の力が必要なんです!」
「だからなんの⁉」
「それはもちろん、小説の! です!」
ようやく、この不審者兼クラスメイトの目的が判明したわけだ。
「――なぜ、僕なんだ?」
「それはもちろん、新人賞の三次選考落選という、素晴らしい功績を称えてですね」
「何気に上から目線な上に嬉しくない物言いだな。しかし生憎だが、僕はこう見えて忙しい。悪いが他をあたってくれ」
「そんなぁ! お願いします師匠だけが頼りなんです!」
と言って、また詰め寄る佐々。手まで握り締められ逃げられない。
そういえばこの前、何気なく自分のエッセイ検索したら、なんとYouTubeに動画として上がってました!どうやら最初から、主催者さんが動画にする催しだったみたいです。コメ欄のみなさんのお優しいこと…!感動しました!




