12 まずは話し合いを
前置き長くてすみません。
「自己紹介はいらないな。単刀直入に聞く」
「はい。なんなりとどうぞ、師匠」
「師匠ではないがな。まず第一に、これだけは聞いておく。貴様、僕の紗綾子におかしな真似はしてないだろうな」
返答如何によっては、リビングが修羅場と化す。靴ベラはもうないが、より強大な、覚悟と言う名の武器を、僕は持っているのだ。
「おかしなこと? おかしいのは師匠だよ」
「その師匠と言うのはやめろ。僕はなにもお前に教えてなどいない。それと僕はおかしくない。かわいい妹を守るのは当然のことだ」
「さーやはなにもされてないよ。お兄ちゃんにはいろいろヤられちゃったけど。そのうちお金とるよ?」
「そうか、ならばいい。では改めて聞かせてもらおう。お前・・・・・・佐々がこの一週間ほど僕をつけまわしていたストーカー。これは間違いないな?」
「え? 違いますけど」
「なんだと⁉」
まさかもう一人いるというのか。僕にイタズラしようと目論む危険な変質者が。
「私は師匠の行き帰りのお伴をしてただけですし、たまに差し入れを部屋のドアにぶら下げただけで、ストーカーなんかじゃありません。そんな人がいたら私が気づいてます!」
と、胸を張る佐々。紗綾子よりもずいぶんボリュームがある胸が強調されて、なんだか見てはいけないようなものを目の当たりにした気分だが、今はそんなことどうでもいい。
「・・・・・・本気で言っているのか」
「えー? なにがー?」
ちょいちょいタメ口になるよなこいつ。同い年だから別にいいけど。
「つまり、僕が登下校中に感じた視線は・・・・・・」
「私ですね。いつも影から見守っていました」
「差し入れの入ったビニール袋も」
「ほら、師匠ってなんていうか・・・・・・ヒンソー? な体してるから、ちゃんと食べてるのかなーって心配になって・・・・・・」
さっきからかわいそうな人を見る目をしていたのはそれでか。言い忘れたが、僕は未だにパンツ一枚で座っている。
「それをストーカーと呼ぶんだ! もういい埒が明かない、警察に電話だ! 紗綾子!」
「はいよ」
「ひゃくとーばんとは何番だ!」
「029‐2××‐××××」
僕はケータイを手に取ると(テーブルの上にあった)教えられた番号をプッシュした。
途端に家の固定電話が鳴りだした。
なんか佐久間くんがおかしな感じに見えますが、彼はお兄ちゃんとして正しい行いをしているだけです。




