表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

楽園

作者: ヨダレさん


絞首台の上に立つ貴方、鼓動が高鳴る。

暗緑色の芝生が広がるこの大庭園。

そこで群がり、心踊らせ、目を凝らす民衆。


「私の娘を返してっ!!!」

嘆きに沈んだ被害者遺族の叫びに、彼は聞く耳を持たない。彼にとっては自らの過ちにより、誰が死んでどう悲しもうが、途轍もなくどうでもいいことなのだ。


「とっととくたばれ!!」

そして。暇を持て余した、部活サボりらしき青年達の罵声に、いつにない微笑みをみせた。


「この平穏は、きっとこの先も続くんだろうな」

彼は、そうボヤくと鼻で大きく究極の酸素を吸い込んだ。銀粉を混ぜたようなこの淀みの曇空は、常に忙しなくゆっくりと動いている。どこまでも果てしなく。


ちょっとした諧謔のつもりが、ここまで顰蹙を買うことになるとは思いもしなかったと。

そっと力を加えただけなのに崩れていく積み木のお城。後に、基盤が奔逸していることに気づくのだ。


__ やつれ顔の私は最期、死期の近づいた彼に一つ尋ねる事にした。


「教えてください。あなたは、どうしてこんな事をしたのですか」


鬼は、何が故に生まれてしまったのか。その根源を知ったところで、特に私の仕事上意味は為さない。

だが気になるのだ、真髄を。ミステリー小説の核を。


腸が煮えくり返った市民らは、早く殺せ、と先程よりもヒートアップして怒鳴りを上げている。


私が質問をしてから、暫くの沈黙が続いた。

教誨師が罪に対する改悛の情を持つべきだ。と言い終えた時。やっと彼は俯いた顔を上げて、こちらに振り向き、口を開けた。


「...単純に、寂しかったのかな」


彼は少し照れくさそうに、笑った。そこには、遊び尽くし、疲れた無邪気な子供がいた。

死刑執行の知らせであるベルが鳴り響き、彼は役人に連行されていく。そして、抵抗を見せることなく、沢山の人に見送られながら、呆気なく死んだ。

私は皿に乗ったピザを一切れ、摘む。


___会場には、囂囂たる歓声と拍手が湧き上がった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 『わたし』と『彼』は知り合いだったのでしょうか。 ただ、不思議と惹き付けられるような文章でした。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ