楽園
絞首台の上に立つ貴方、鼓動が高鳴る。
暗緑色の芝生が広がるこの大庭園。
そこで群がり、心踊らせ、目を凝らす民衆。
「私の娘を返してっ!!!」
嘆きに沈んだ被害者遺族の叫びに、彼は聞く耳を持たない。彼にとっては自らの過ちにより、誰が死んでどう悲しもうが、途轍もなくどうでもいいことなのだ。
「とっととくたばれ!!」
そして。暇を持て余した、部活サボりらしき青年達の罵声に、いつにない微笑みをみせた。
「この平穏は、きっとこの先も続くんだろうな」
彼は、そうボヤくと鼻で大きく究極の酸素を吸い込んだ。銀粉を混ぜたようなこの淀みの曇空は、常に忙しなくゆっくりと動いている。どこまでも果てしなく。
ちょっとした諧謔のつもりが、ここまで顰蹙を買うことになるとは思いもしなかったと。
そっと力を加えただけなのに崩れていく積み木のお城。後に、基盤が奔逸していることに気づくのだ。
__ 窶れ顔の私は最期、死期の近づいた彼に一つ尋ねる事にした。
「教えてください。あなたは、どうしてこんな事をしたのですか」
鬼は、何が故に生まれてしまったのか。その根源を知ったところで、特に私の仕事上意味は為さない。
だが気になるのだ、真髄を。ミステリー小説の核を。
腸が煮えくり返った市民らは、早く殺せ、と先程よりもヒートアップして怒鳴りを上げている。
私が質問をしてから、暫くの沈黙が続いた。
教誨師が罪に対する改悛の情を持つべきだ。と言い終えた時。やっと彼は俯いた顔を上げて、こちらに振り向き、口を開けた。
「...単純に、寂しかったのかな」
彼は少し照れくさそうに、笑った。そこには、遊び尽くし、疲れた無邪気な子供がいた。
死刑執行の知らせであるベルが鳴り響き、彼は役人に連行されていく。そして、抵抗を見せることなく、沢山の人に見送られながら、呆気なく死んだ。
私は皿に乗ったピザを一切れ、摘む。
___会場には、囂囂たる歓声と拍手が湧き上がった。