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捕虜となった軍師  作者: 紫陽花
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カザリルが条件を受け入れ降伏したその次の日、早々にテオドールは護送用の馬車に乗せられリトアニアへと向かっていた。

捕虜を護送する馬車の作りがいいはずもなく、それに加えて相当急いでいるのかかなりの速度で走っているため余計にガタガタと大きく揺れる。その度に体中の傷がズキズキと痛み顔を歪めた。


「.....おとなしく治療されとくんだったな」


そうぼやくと鉄格子のはまった窓から馬車が止まる様子のないことを確認して慎重にジャケットを脱ぎ、その下に着ていたシャツも脱ぎだした。パサリというシャツが床に落とされる音とともに現れたのは素肌ではなく包帯。とくに傷がひどいのか背中側の包帯には所々血が滲んでいる。テオドールは背中に手を回すと探るように包帯の上を滑らせ、一番痛みの強い部分に手のひらをそっと押し当てた。すると手のひらからポウっと淡いピンク色の光が漏れ出す。しばらくして手を離すとその光は消え、彼は服を着だした。先ほどの光は回復系の魔法を使うときに現れるのもので、現に彼の動きが脱ぐときと違って若干ではあるがテキパキとしている。


「これでリトアニア到着まで保つといいけど....」


カザリルは国土こそ小さいものの周りを山々に囲まれていて大勢の人間が馬で通れる道はそう多くはない。しかも正規の道を通らなければ土地勘が有るはずの地元の人間でさえ帰ってこれなくなることがあり、年間かなりの人数が行方不明になっている、という話は国内外を問わず有名な話で、よって否応なく正規の遠回りな道を通るしかなくなるのだ。リトアニア軍もカザリルへの進軍の際には正規の道を通っており、これもまたカザリルが想像以上のねばりを見せた理由であろう。

テオドールがいたカザリルの王都からリトアニア領に入るまで少なくとも5日はかかる。

彼は自分が運ばれるのはリトアニアの王城もしくはその付近の収容所だと踏んでおり、となると5日どころか半月近く掛かかるだろう。しかしそれは"転移装置"を使わなかった場合の、きちんと大地を踏みしめて自身や馬の足で歩いた場合の話しなのだ。


現在この世界はめまぐるしく発展する科学技術と魔法が人々の生活をより豊かにしている。中でも科学と魔法を融合して作られたこの"転移装置"は今や世界各国で当たり前のように使われており、生活には欠かせない物となっていた。とはいえ、この世界は決して平和とは言い切れないそんな世界だ。今回のカザリルとリトアニアのように戦争は大なり小なりあちこちで起こっている。この転送装置を使えば、少なくとも小隊の1つや2つは優に送れてしまうため流石に危険すぎるという話が出たのだ。そのため転送装置が使えるのは各々の国土内のみ、尚且つ使用の際にはその国の王家の紋章が入った専用の木札をかざさなければならない、ということが各国の首長間で決められた。それらは全て魔法の掛かった洋紙にしたためられ、首長たちの血判も押されたことで破ることのできない条約となっている。

つまり、リトアニア領に入ってしまえば転送装置が使えるため、どんなに離れた場所に居ようとも物の数秒で目的地に着くため5日間先ほどの回復魔法が保ってくれれば馬車が揺れるたびに振動が傷口に響くことを恐れずに済むのだ。












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