選ばれし?者
城塞都市エーテルニア
中央広場
「あー。多分俺らだと、まだこのスライム討伐しか受注出来ないかなぁ。」
「ス、スライムってあのコラーゲンたっぷりみたいなゼリー状のモンスターよね?」
心配そうに掲示板に張り出されている討伐クエストの張り紙を見つめる女の子。
張り紙には
【アンランククエスト】
湖畔を荒らすスライム5匹の討伐
報酬:500G
有効期限:3日
と書かれたクエスト依頼書が張り出されていた。
「まぁ最初のクエストだし、俺ら駆け出し冒険者だからこういう雑魚敵から狩っていかないとな。」
「そのスライムってどんな攻撃してくるの?」
「んー、イメージだと体当たりかなぁ。こういった世界ではまず誰もが最初に戦うモンスターだし、そこまで強くないから大丈夫だいじょーぶ。」
女の子は不安そうな顔をしながらも頷き、依頼書を手に取る。
さて、とうとう初めてのモンスター討伐の時間だ……
俺は初めてのモンスターとの戦闘にウキウキとしながら、その反面女の子は不安そうにうなだれながらギルドの受付まで足を運んだ。
5時間前−−−
普通の高校2年生である俺、ヒナタ リクはいつも同じように学校に行く準備をしていた。
制服に着替え、鞄を手に取り、玄関へと向かう。
この玄関を開けるとまたいつもの少し退屈な日常が始まる。
授業を受け、そこまで仲良くもない友達とバカな話をし、学校が終われば真っ直ぐ家に帰る。
そして部屋でゲームをしながらダラダラと過ごし、一日が終わるんだ。
(なにか突然、ビッグイベントでも起きないかなぁ。)
そんなことを考えながら玄関を開け外に出る。
すると目の前に広がっていたのはいつもの見慣れた住宅街ではなく、先の見えない真っ白な空間だった。
「えっ……?」
何が起きているのかまったく理解できず、目の前に広がる空間のように頭の中が真っ白になる。
しばらく固まっていると、背後から玄関の閉まる音が聞こえた。
慌てて振り返ると、さっき自分が出てきたはずの玄関は跡形もなく消え去っており、代わりに一人の男が立っていた。
「どーもリク君。待ってたよ。」
男はそう言うと微笑みながら手を差し出す。
俺は未だに自分の置かれている状況が理解できず、男を見ることしかできない。
30代くらいだろうか……肩辺りまで伸びた白く輝く髪、すべてを見透かされそうなほど深く綺麗な碧い瞳、服も白く見たことのない模様が描かれたローブをまとっている。
「あー、まだ何が起こっているか分かってないのか。じゃあとりあえず着いてきてよ。」
そう言われるまま男に手を握られる。少し冷たいその手に握られたとき、ようやく疑問が浮かび上がる。
「……あの、ここはどこ…ですか?」
「え?あぁ、そんなことは別に気にしなくていいよ。それより早くこっちに。」
男を見ると先程までの落ち着いた表情とは一変、今はなんだか目が輝いているように見える。
なんとなく、なんとなーく嫌な予感がしながらも、男に手を引っ張り足早に歩きだす。
まるで子どもが新しい発見を誰かに言いたくてしょうがない……そんな表情に見えた。
されるがまま着いていくと、なにもない空間にポツリと玉座のような立派な白いイスが一つあり、その隣にあるのは……
「……ル、ルーレット?」
「そう!そうなんだよ!!いやーリクは良いところに目を付けるねー。さすが選ばれしものだ!」
男は手を離しイスの横に置いてある、この神秘的とさえ感じる白い空間とは不釣り合いな、バラエティ番組にありそうなルーレットに小走りで近づく。
「これはね、僕があまりにも退屈だったから作ってみたんだ!その名も……
《異世界行きは誰!?ドキドキルーレット!》だ!!!」