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第三十二話:ドMとクラスメイトと決闘

「よし、私が出よもがーっ」


 早速エカテリーナ様が出て行こうとしたので、慌てて僕と熊岡くんと富田くんと馬井くんがエカテリーナ様を止めた。


「だめでしょー!!」


「総大将がいきなり出て行ったらだめでしょー!!」


「エカテリーナ様に何かがあったら心配なんだ!」


 僕、富田くん、馬井くんの発言順である。


「しかし、私が行かなければ勝てるものも勝てないかもしれん」


「そこは部下とか僕たちを信頼して下さいよ」


 どうやら、イリアーノでも一番強い騎士団は本国にいるらしい。

 王様直属の近衛兵隊というやつだ。

 次に強いのが、エカテリーナ様直属の騎士団。

 彼らも全員が技を使えるレベルで強いんだけど、見た感じ、ザンバーさんレベルには遠く及ばない。

 で、エカテリーナ様は多分、ザンバーさんと互角くらい。

 これだけでもとんでもなく強いんだけど……。


「僕が出て行ってみますよ!」


 僕が宣言すると、みんなびっくりしたようだ。


「えっ、張井お前手ぶらで決闘するのかブウ!」


「張井、危険だぞ!」


「いやいや、誰が行くかって時に危険だからって行かなかったら、何も始まらないでしょ」


 僕は突っ込む。

 それにだ。


「まだ出てこないのか! イリアーノは腰抜けか! 過去の栄光に泥を塗るつもりらしいな!」


 挑発的な言動をする遊牧民側の戦士。

 あの人が女性なのだ。

 結構かわいい。


 彼女は戦場でもなかり活躍していた。

 派手な飾り布をつけて、槍を振り回して次々に兵士をなぎ倒していく。

 馬に乗ってよし、地を走ってよし、巨獣を使わせてよし、遊牧民側のあらゆる戦術で活躍しているらしい女性戦士だ。

 おっぱいも大きい。


「僕が行く」


「ハリイ、鼻が膨らんでいるぞ」


「張井くんのことっすから、またいやらしいことを考えているっすよ!」


「張井くん不潔!」


「あたしならいつでもいいのに……」


『魔力がアップ!』

『精神がアップ!』


 ひええ!

 さげすまれるのはいいけど、マドンナからの熱視線には危機感を覚えるぞ!

 僕の貞操が危ない!!

 ということで、ちょっとエカテリーナ様があっけに取られているうちに、僕はさっさと決闘の場に行く事にした。


 もちろん、周囲はびっくりした顔になる。

 えっ、子供?

 っていう雰囲気だ。

 しかも手ぶら。

 普段着。


「……お前が私の相手なのか?」


 遊牧民の女戦士が戸惑った表情で問いかけてきた。


「そうです!」


「おいィ!」


「引っ込め小僧!」


 イリアーノからも遊牧民からも野次があがる。

 まあ、そりゃあ僕はお世辞にも強そうに見えないしなあ。

 ということで、デモンストレーションだ。


「”腕力強化”!」


 僕は魔法を使い、体力準拠で攻撃力を上げる。

 そして、拳でその辺の地面を殴った。

 すると、鈍い音がして、岩盤が宙に跳ね上がる。

 一塊が子供ほどもある大きさだ。


 そしたら、外野が黙った。

 見事に静かになった。

 で、遊牧民戦士のお姉さんが僕を見る目が変わる。


「なるほど……見た目どおりの戦士というわけではないようだな。さすがはイリアーノといったところか。戦士の層が厚い」


 遠くでエカテリーナ様が、ハラハラしながらこっちを見守っているんだけど、遊牧民の言葉に「いやいやいや」というジェスチャーをした。

 だけど、この場は僕こそがこの決闘を受ける資格のある戦士だって認めたみたいだ。

 緊張感が戦場を支配する。


 みんなの目が僕たちに注がれているのだ。


「名のある戦士と見た。我が名はハルディンの子、サリア。お前の名を聞こう!」


「張井辰馬です!」


「戦士ハリイ! その名はしかと胸に刻んだぞ」


 胸に!

 その大きなおっぱいに刻まれたのなら本望かもしれない。


 ところで。

 僕は、戦闘力が高くない。

 どっちかというと耐えるスタイルで、技だってみんなカウンター技だ。

 しかも一つ制限があって、その技はどれも、綺麗なお姉さんには使えないのだ!

 この綺麗ってのは、僕の主観によるみたいなんだけど、うん、サリアさん超可愛い。

 うへへ、僕ピンチだなあ。


「あっ、張井が嫌らしい顔をしやがった!」


「ありゃいやらしい事を考えてる顔っすね!」


「不潔です張井くん!」


『精神がアップ!』


名前:張井辰馬

性別:男

種族:M

職業:M

HP:116450/116450

腕力:6

体力:450→485

器用さ:8

素早さ:6

知力:4

精神:206→265

魔力:140→200

愛 :498→567

魅力:25


取得技:ダメージグロウアップ(女性限定、容姿条件あり)

    クロスカウンター(男性限定、相手攻撃力準拠)

    全体カウンター(男性限定、固定ダメージ)

    河津掛け(相手体重準拠)

    反応射撃(射撃か投擲できるものが必要、相手攻撃力準拠)

    全体ガード

    気魔法行使レベル1



 うん、こうして見返してても、気魔法で腕力を上げて物理で殴る以外に僕が取れる攻撃は無いね。

 河津掛けをやろうにも、サリアさんは体重が軽そうだ。僕よりは重いと思うけど。おっぱいの分だけ。

 さあて……どうしてくれようか、あのおっぱい。


「行くぞ、戦士ハリイ! たあーっ!!」


 サリアさん、掛け声を上げると同時に走った。

 物凄く速い!

 僕は反応できずに、彼女の槍を受けてしまう。

 だけど基本的に僕はHP制なので、ダメージを受けても刺さらない。


「むっ!? 槍が!?」


 一撃、二撃、三撃。

 見た目では一発にしか見えないのに、一瞬で三発叩き込まれた!

 刺さって衝撃が抜けると言う事が無いので、僕はそのまま吹っ飛ばされる。

 地面でバウンドした。

 悲鳴が聞こえた。多分、マドンナの声。

 だけど僕はこれくらいじゃ堪えない。

 地面を顔でこすりながら、無理やり起き上がる。

 くっ、なんて、なんて一撃だ!


 凄くいいじゃないか!!

 これこれ、こういうのを求めてたんだよ!!


『HPがアップ!』

『HPがアップ!』

『HPがアップ!』

『体力がアップ!』

『魅力がアップ!』


 体の中からパワーが湧き上がってくる!

 大体湧いてくるのがHPとかで攻撃力に関係ない辺りが実に僕だけど。


「立ち上がるか……! では、これでどうだ! ”流星衝”!!」


 高らかに飛び上がったサリアさんが、僕目掛けて槍を投げつけてくる。

 槍は彼女の気みたいなのを帯びて、金色に輝く。

 うひえ、ありゃ痛そうだ!

 サリアさんの渾身の一撃だぞ!


「最高のごほうびです!!」


 僕は自ら槍に突撃して、お尻からぶつかった。

 ヒェッ!

 お尻にちょっと刺さったよ!

 新たな快感に目覚めそうだ!!


「うわああ!!」


 サリアさんが真っ青になって叫んだ。


『HPがアップ!』

『HPがアップ!』

『体力がアップ!』

『精神がアップ!』

『愛がアップ!』

『魅力がアップ!』


 両方の陣営から、「ぎゃあ」とか「うげえ」という声が聞こえてくる。

 熱気に包まれた戦場が、急にクールダウンしていくのが分かる。

 引いてる。


「ふう……こんなもんですか、サリアさん!」


 僕はかっこよく言いながら、お尻に刺さった槍を抜いた。

 むむっ!!

 ふーむ。

 なるほどなあ。


『HPがアップ!』

『HPがアップ!』

『知力がアップ!』


 あっ!!

 お尻ダメージを知ったら知力が上がったぞ!!

 我ながらこれはひどい!


「くそっ、私の新しい槍を持て!!」


 サリアさんの腕に新たな槍が手渡される。


「今度は……近づかせんぞ!! ”風車”!!」


 サリアさんは槍を僕に向けて振り回し始めた。

 回転は物凄い速度になっていき、風を生む。

 まるで真横に吹く竜巻だ。

 多分、魔法と技をあわせた奴だろう。

 だって、


『HPがアップ!』

『体力がアップ!』

『精神がアップ!』


 バランスよくステータスが上がっていくもの。


「うわー!」


「ぎゃー!」


「ひえー!」


 兵士たちが風の巻き添えになって吹っ飛ばされていく。

 僕はというと、


「”腕力強化!”ええと、愛準拠で!」


 強化した攻撃力で地面をパンチして、拳をめり込ませている。

 これでなんとか吹き飛ばされずに済んでいるのだ。


「これでもまだ駄目か!! ええい、しぶとい奴だ!!」


「ええ、まだ僕はピンピンしてますよ! サリアさん、もっと! もっと僕を責めて!!」


「きっ、気持ち悪い!! 槍をありったけ持ってこい!! 食らえ! ”流星蓮華”!!」


 さっきの流星衝とうやつを連続で放つ技だ!

 これ、ちょっとした軍隊を一人でまとめてやっつけられるレベルの技だよね!?

 僕一人に向かって槍の雨が集中してくる!

 くっ……さすがにこれは……!

 全部をお尻で受けるのは無理だ!


『HPがアップ!』

『HPがアップ!』

『HPがアップ!』

『HPがアップ!』

『HPがアップ!』

『体力がアップ!』

『体力がアップ!』

『知力がアップ!』


 知力が上がったところは上手く尻で受けられたところだね。

 だけど、決闘はこう着状態になった!

 うん、分かってた。

 僕はサリアさんを攻撃する手段がないし、サリアさんの攻撃だと僕を削りきれない。

 っていうか、サリアさんが攻撃するほど僕は気持ちよくなって強くなる。


「張井くん、もうあのステータスは化け物だわね……」


 出羽亀さんの戦慄する声が聞こえた。

 この決闘で随分強くなった気がする。

 多分、準勇者クラスっていう人の攻撃を受けまくったからだろう。


 とりあえず戦況は、千日手!

 僕とサリアさんの決闘は、朝に始まって、お昼休憩を挟んでおやつタイムまで続いた。

 ついにサリアさんは根負けしてしまい。


「わ、私はもうだめだ……」


 ばったりと倒れた。

 技の使いすぎで過労かもしれない。

 立っているのは僕である。

 わっとイリアーノから歓声が上がり……はしなかった。

 両軍とも戸惑った空気。

 なんだかなあ、という感じだ。


「みんな!」


 僕はここぞとばかりに声を張り上げた。


「このように、戦争なんて下らないものなんだ! 戦うのをやめよう!」


「えっ」

「えっ」

「えっ」

「えっ」


 周囲からオドロキの声が漏れる。

 どうだ。

 こうして決闘に勝った僕が何も要求せず、平和を訴えるなんて予想外だろう。

 ぐうの音も出まい。

 すっかりお通夜ムードになった戦場は、今日は早めに終わってしまう事になった。

 イリアーノ軍の兵士も、何故か僕に近づいてこない。


「みんなー」


 僕が走っていくと、みんながザザッと退いた。


「えっ」


「いやあ、張井くん、アブノーマルな趣味はさすがにまずいっすよ!」


「そろそろハリイについていけなくなってきたです!」


「は、張井くんがお尻好きなら、わ、わ、わたし頑張るるる」


「奈緒美無茶しないで!」


 決闘で勝利を得たが、人として大事なものを失った気がする!

 だけど、エカテリーナ様だけは笑顔だった。


「うむ、余計な犠牲も無くことが片付く……。素晴らしい成果だハリイ。お陰で聖王国の介入前に、戦場を制することができた」


 ……あ、聖王国が来るんだった。

 忘れてた。

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