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第三話:ドMと仲間と旅の始まり

「死ね!! みんな死んじゃえ!!」


 委員長の言葉とともに、ビームが放たれる。

 無用心に当たったクラスメイトは灰になって、カードに戻る。


「やめなさい! あんた、やめろ!!」


 鬼の形相でマドンナが叫んだ。

 彼女の周りには、操り人形みたいになった男子生徒が数人。

 多分、マドンナの得た能力が、男子を操る力なんだろう。


 対する委員長は、相手を灰にする光線。

 これはひどい。


 僕は匍匐前進を開始した。

 なるべく、委員長やマドンナの視界に入らないためだ。

 何故か新聞屋も後ろを匍匐前進してくる。


「ついてくるなよう」


「へっへっへ、旦那も人が悪い。あっしもつれってってくださいよう。あっ、張井さん、肩にほこりが!」


 我が身を守る為なら、僕にだって媚を売る!

 新聞屋は圧倒的な三下力である。

 だが、本当に僕の肩のほこりを払おうとして体を起こしたので、委員長に見つかってビームを放たれたらしい。


「うぎゃあー!」


 女の子とは思えない悲鳴をあげて、また近くにいた男子を蹴り飛ばして盾にした。


「ふう……あそこに人柱がいなかったら即死だったっす」


「新聞屋ってほんとすごいよね……!」


 感動すら覚える僕。

 さて、そんな僕らが向かうのはベルゼブブのところだ。

 彼もちょっとしゃがみこんで僕らを迎えてくれた。

 大変機嫌がいいようだ。


「いきなり殺し合いを始めるなんて、嬉しい誤算だよ! いやあ、君たちを召喚して本当に良かった!」


「ユアウェルカム」


 握手を求めてくるので、僕もドヤ顔で握手を返す。


「えっへっへっへ」


 卑屈な笑みを浮かべて、新聞屋もそこに手を重ねる。


「それで、どうしたんだい?」


「いや、いい加減僕たち逃げたいんですけど。このままだと、殺しあってみんな死んじゃうから、一時の快楽にはなるけどあなたを殺しにいけないですよ」


「……ホントだ!」


 僕の言葉に、ベルゼブブはハッとしたようだった。

 あまりに今の状況が楽しくて、そのことに気づいていなかったようだ。

 本末転倒過ぎる。


 そういうわけで、委員長とマドンナと、マドンナの取り巻き以外を指定して、教室の外にワープさせてくれることになった。

 ゲートっていう魔法? 魔術? らしいんだけど。


「別に君だけ外に出してもいいんだけどね」


 ベルゼブブがチラッとこちらを見ながら言うと、新聞屋は凄い汗をかきながら、必死にもみ手しながらひざまずいた。


「えっへっへ……! そ、そんな、旦那、人が悪いっすよー! あっしもこう、そのゲートとやらの隅っこだけでも、端っこだけでも使わせていただいてですね……! いやもう、なんでもしますって! 靴もお舐めしますから!」


 すごい!!

 これは稀有(けう)な人材かもしれない!!

 本当に、今にもベルゼブブの靴を舐めそうだ。しかも自主的に!


「ベルゼブブさん、彼女も一緒に連れて行ってください! この人面白いです!!」


「うん、ここまで卑屈な人間は見たことがないなあ。ちょっと僕も感心したよ……」


 流石にベルゼブブもちょっと引いている。

 そんなこんなで、僕と、クラスメイト何人かは外に出られることになった。

 委員長とマドンナのことについてはどうなったか知らないなあ。

 富田くんも真っ青な顔になって脱出してきていた。

 なんだ君、生きてるのかよ。


「死ぬかと思った……。なんだよ、ここ……!」


「そりゃ、異世界だよ」


「異世界に決まってるっすよ。富田くんはそんなことも知らないっすか?」


 新聞屋がドヤ顔だ。なんで君がドヤ顔なの!

 やばい。この娘すごく濃い。

 僕のキャラが食われる!!


「うるせえよ新田!! お前こそなにけもみみ生やしてるんだよ!」


「これがあっしの特殊能力っすからね! そういう富田くんは実に豚豚しいっすねえ」


「ほんとだ。ただでさえオークだったのにもっとオークになってる」


「ぷぎい!!」


 富田くんが怒った。

 彼はとにかく攻撃力を求めたらしい。そうしたら、パワフルな種族に転生したということだ。

 つまりオーク。


「皆さん、これって本当に、あのベルゼブブっていう子が仕掛けたゲームみたいですよ」


 声をかけてきたのは、逃げ出したうちの一人。

 がり勉少女の(きざはし)さん。

 彼女もいじめられっ子サイドで、とにかく空気が読めない子だ。

 あと、気持ち悪いくらい滑舌がいいので、気持ち悪くていじめられている。

 だが空気を読めないので、とにかくガンガン発言してくるのだ。


「この視界の端にあるボタンみたいなのを押すように意識すると、いわゆるロールプレイングゲームで言うステータスでしょうか? そういうのが出てきますね」


「どれどれ」


 僕は目を凝らしてみる。

 すると、確かにそういうのがある。

 ポチッとな、と意識。


 出た。



名前:張井辰馬

性別:男

種族:M

職業:M

HP:30/30→36

腕力:3

体力:8→9

器用さ:5

素早さ:3

知力:4

魔力:0

愛 :14→15

魅力:1→2


取得技:ダメージグロウアップ(女性限定、容姿条件あり)



 なるほど、これが僕か。

 そして、多分これは、戦ったり、能力を使うほど強くなるのだ。

 僕は、その成長条件に「ある程度以上の容姿の女性にいじめられる」が入る。

 種族と職業がMだけど、何かの略称だろうか。M、M、マローダー(襲撃者)、とか?

 いや、どっちかと言うと、僕は女の子に(物理的に)襲撃される方だよな。


「俺は種族がオークになってた。職業戦士で、取得技はボーンクラッシュだとよ。殴ると相手を麻痺させられるみたいだ」


「あっしは種族がワータヌキっすね! 職業は密偵で、取得技はヘルイヤーっす!」


 新聞屋はまんまだなあ。


「私は種族が人間、職業はカードホルダーです。取得技はカードファイリングですね」


「えっ? カードファイリングっていうと」


 階さんは空間に指を這わせると、そこをまるで、本のように開いた。

 空中に生まれたファイルに、さっき死んだクラスメイトたちがカード化されて収まっている。

 彼らの名前と、能力の名前が下についている。


「私はどうやら、カードになったみんなを保管する能力みたいです。カードになったみんなをコストとして消費して、彼らの能力も発動できるみたいですね」


「ひい!! し、消費するっすか!?」


「消費しないでやってくれ!」


 新聞屋と富田くんがびびっている。


「ですけど、消費しなくちゃいけなくなったら、消費するしかないじゃないですか! 私たちが生き残らないと、全滅なんですよ!」


 正論だ。

 人情とか一切加味しないあたりが素敵である。

 そんなわけで、僕と新聞屋と階さんとオークと、あと三人くらいの旅が始まったのだ。

 もうクラスメイトが二十人くらい脱落してるんだけど……。

旅立ち編終了です。

2~3日に一話くらいのペースでいきます。

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