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第二十三話:悪魔グレモリーからベルゼブブへのレポート

拝啓ベルゼブブ様


 とうとうガーデン運営にも五百年が経過した今日この頃、いかがお過ごしですか。

 グレモリーは頼まれたとおり、ベルゼブブが呼んだ人間達を調べているです。

 つい最近まで、その中のハリイとニッタという二人と行動していたです。

 流れに任せてたらレヴィアタンを見つけたです。

 詳しい位置情報はここに書いておくです。


(のたうったみみずのような線で、地図らしき落書きがされている)


 グレモリーはハリイたちと別れるふりをして、人間の町に潜伏したです。

 人間の町には、ベルゼブブが呼んだ人間が先に入り込んでいたです。

 奴らは強固な支配体制を築いていたです。

 一人は、憎悪を抱いた対象に強い効果を発揮する攻撃を行えるです。

 一人は、相手を洗脳して操り人形にしてしまえるです。

 悪魔兵士で試してみたら、灰にされたり操られたりしたので、多分あれは鍛えれば悪魔にも効くです。

 グレモリーは危ないと思ったので近づいてないです。

 グレモリーは賢いです。


 その町にハリイとニッタが入っていったです。

 一週間くらいで新しい勢力が出来ていたです。

 正直、ハリイとニッタが何をやったのかグレモリーにはよく分からなかったです。

 えすえむくらぶ、とかいうサービスを作り出して、町の半分をそれで取り込んでしまったです。

 ハリイの発案らしいです。

 ハリイには内政の才能があるです。


 二分されてた町が三分されたので、先に支配者になっていた二人が動いたです。

 かたっぽの、憎悪した相手に強い効果を発揮する攻撃をするほうを「つるぺた」、相手を洗脳して操り人形にするほうを「ぽちゃ」と呼称するです。


 最初はつるぺたが接触したです。

 だけど、ハリイが強くなっていて、ニッタを狙ったつるぺたの攻撃は、ハリイに防がれて効かなかったです。

 つるぺたは退却したですが、その後、つるぺたの領地では支配が優しくなったみたいです。


 次にぽちゃが接触したです。

 ぽちゃは町の人間を洗脳していたので、それをハリイとニッタにぶつけようとしたです。

 だけどやっぱりハリイには通用しなかったです。

 そして、ニッタがハリイごとぽちゃを殺そうとしたです。

 ニッタはすぐに仲間ごと敵を葬ろうとするです。

 あいつ悪魔の才能があるです。

 だけど味方にしたらすぐ裏切るのでお勧めしないです。


 ニッタが自分の領地を自分でめちゃくちゃにしてしまったです。

 ニッタの魔術は強いです。

 ニッタは自分の魔術を制御する気がないです。いつも最大火力です。

 なので、めちゃくちゃになった領地を、ハリイが立て直したです。

 全ての領地から協力する人たちがやってきたです。

 そしてドサクサ紛れに、ニッタの領地が広がったです。


 今、ニッタの勢力が町で一番大きくなったので、つるぺたとぽちゃの被支配層がそちらに移動しようとしているです。

 権力側は被支配層の移動を認めたくないので、弾圧を始めているです。

 権力側は少数です。

 被支配層が多いです。

 不満が溜まってるです。


 グレモリーには分からないけど、ハリイとニッタの領地は不満とかが少なくて、理想郷らしいです。

 叩いたり叩かれたりして、なんでみんな嬉しそうにしているのか分からないです。

 外から見るとハリイとニッタの領地は理想郷に見えるです。


 近々、また大きな事件が起きるです。

 今度は最大の事件になるです。

 旧史が語るところの革命が起こる可能性が高いです。

 グレモリーはその光景を、甘い飲み物を飲みながら見物するです。




「ふう」


 グレモリーは一息にレポートを書き終えて、ちょっと疲れたです。

 こんなに真面目に仕事をこなすグレモリーは偉いです。


 ここは町の外れにあるグレモリーの作った屋敷です。

 魔術の結界が張ってあるから人間は気づく事ができないです。

 グレモリーからは人間たちは丸見えです。


 ほんの一ヶ月くらいで、人間たちはよく動くです。

 グレモリーたち悪魔は寿命が無いから、ああいう風にせかせか動かないです。

 明日やれる事は明日やるです。

 人間はすぐ死ぬから、せかせか動くです。

 めんどくさい奴らです。


「このてがみを、もっていくです!」


「クルッポー」


 グレモリーは魔術で強化した鳩に手紙をくくりつけたです。

 これでベルゼブブへの義理は果たしたです。

 あとはのんびり、町で起こる混乱を見物するです。


「サンドイッチでも作るです」


 グレモリーは思い立ったです。

 町で買い込んでおいた大きなパンを貯蔵してあるです。

 塩漬け肉と豆の漬物を合わせて、ジャムで甘くするです。


「えっと、たしか、ここにあったはずです」


 グレモリーはうーんと伸びをして手を伸ばしたです。

 ジャムは棚の上にしまっておいたです。

 わざわざ踏み台を持ってくるのもめんどくさいです。

 空を飛ぶにも、ちょっぴりだけ飛ぶとか効率が悪いからやらないです。

 グレモリーもこの百年くらいでちょっと背が伸びたです。

 きちんと手が届くはず……届かないですー!!


「むぎー!!」


 くやしいです!

 とどかないです!

 戸棚の癖に生意気です!!

 もうこれは魔術で壊して立場と言うものを分からせてやるしかないです!


「はい、取れたよ」


「おお、ありがとです!!」


 親切なハリイがジャムを取ってくれたです!

 これはこの近くで取れる、甘露芭蕉のジャムです。

 幹に少しずつ甘みが含まれているから、たくさん集めて長いこと煮詰めて作る、高価なジャムです。

 これをたっぷりサンドイッチに塗って食べるですよー!


「おおー、贅沢だね!」


「このぜいたくがたまらないです!」


 ハリイはよくわかってるです。

 やはり人間の中ではかなりできるほうの奴です!

 でも本当にハリイがいてよかったです!

 お陰でこうやってジャムが取れて、戸棚を壊す事も………………ハリイ?


「うわ――――!! ななななな、なんでハリイがここにいるですかーっ!!」


 グレモリーは腰を抜かしかけたです。

 危うくお漏らしするところだったです!


「ははは、グレモリーちゃんの声が聞こえたから玄関から入ってきたんだよ!」


「な、なんでこの屋敷を見つけることが出来たですか!!」


「新聞屋が新しい魔法を使えるようになって、一回物は試しって町全体にかけたんだよ、”魔術消去(マジックイレイザー)”。そしたらもう、大変な事になっちゃって。あっはっはっは」


「わらいごとじゃないですーっ!? それってグレモリーのまじゅつをむこうにするレベルなら、つるぺたやぽちゃののうりょくも、むこうにされているかもしれないですっ!!」


 大変です!

 急展開です!

 やっぱり人間は落ち着いて物事をやるとかできない生き物です!

 サンドイッチを食べる暇が無いのは残念ですけど、これは無視するわけにはいかないです!

 いやー、しかし本当にニッタは何を考えてるか分からないですね!

 あっさり状況を致命的にするような選択肢を選ぶです!


「新聞屋は多分何も考えてないんじゃないかなあ」


「せきついはんしゃでいきてるですね!」


「こらーっ!! あ、あっしをまるでそして考えるのを止めた、的な生き物みたいに言うなっすー!」


 ニッタも入り口にいたです!

 おっかなびっくり覗き込んでいたです!

 こいつはすごく臆病なくせに、無意味に大胆に行動するから意味が分からないです!


「ニッタはたいへんなことをしたです! つるぺたとぽちゃは、ハリイとニッタのなかまだったです? たすけにいかないところされるですよ!」


「つるぺたは委員長として、ぽちゃはマドンナかな? 殺されるだって! 大変だ!!」


「えっ、放っておけば手を下さずに奴らが消えるっすよ!? なんで助ける必要があるっすか!?」


 あっ、ハリイがニッタをぺちっと叩いたです!


「ぎえええー!! い、今あっしの脳細胞が数千単位で死んだっすよー!! は、張井くんがあっしを殴るなんてえっ!!」


「新聞屋! いいかい、君は確かに僕をいじめる才能があるけど、でも委員長やマドンナにしかできないいじめ方があるんだ!! 僕はあの稀有な才能をつぶしたくない! 僕は助けに行くぞ!」


「ひどいりゆうです!! でもハリイらしいですよ。グレモリーもてをかすです!」


 どうやらベルゼブブにまたレポートを出さないといけなくなったみたいです!

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