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第二十二話:ドMと洗脳とフレンドリーファイア

 アッー。

 僕の頭の中に、マドンナの洗脳光線が入り込んできたぞ。

 この間、委員長の灰にするビームを受けた時もそうだったけど、クラスメイトのみんなの能力はすごく強力だ。

 遺跡を守ってた鎧の攻撃よりも、よっぽど効く。


「うぐぐ……」


「ほらっ、ほら、楽になってしまえ!」


 僕にはまだまだ、隕石がぶつかり続けている。

 結構HPは減っているけど、まだちょっと余裕はある。

 だけど、マドンナは隕石が当たったらすぐに粉々になってしまうはずだ。

 なのにこの状況で僕を誘惑しようとするかー。


 すごい、この人、すごいSだ。

 ぜひいじめられたい。


「うううっ、んがーっ!!」


 僕は、最後の隕石ごとマドンナの洗脳光線を振り払った。

 危ない危ない、日常的に新聞屋から魔法攻撃を受けてなかったら今頃操られていた!


「なっ!? ど、どうして!」


「マドンナ、僕は一つだけ言いたい事がある!」


 新聞屋の攻撃で、すっかり僕の服は破けてしまった。

 つまりまっぱだかだ!

 僕はどーんと仁王立ちになって、ぶらんとぶら下げながらマドンナに差し向かう。


「くっ、あ、あたしを殺すの……!? くそおっ……!」


 マドンナが、教室じゃ見せた事無い顔をして、へたり込んだ格好のまま地面を力なく叩いている。

 多分、新聞屋の魔法で腰が抜けてしまったんだろう。


「くそっ、くそっ、あたしはこんなところで終わらないはずだったのにっ……! 何よ、なんであんたたちはそんなに強いのよ! 不公平よっ……!!」


 後半は半分泣き声になっている。

 なんだか分からないけど、マドンナの琴線に触れたらしいぞ。


「いや、ちがうんだマドンナ。僕は、君を否定はあんまりしないぞ!!」


「えっ」


「きぃー! 張井くんはまだ生き残ってるっすか!? おのーれ!! あっしの最大最強の極大魔法でも死なないとはーっ!!」


「新聞屋しずかにしてくれないか!」


「アッハイ」


「マドンナ、僕は、僕はね。君の靴を舐めろって言われたら喜んで舐めるし、大事なところを踏みつけられたり、全裸で縛られて放置される事だって別に構わないんだ! いや、むしろお願いしたい!」


「は、はあ」


「だけど……全ては、僕の意思で君にいじめられなきゃいけないんだ! 僕は、混じりけの無いMとして君に向き合いたい!!」


 それこそが、僕がマドンナの洗脳を跳ね除けた理由だった。

 だって、教室でマドンナに操られていた男たちはみんな、自分の意思が無いみたいだった。

 あんなになったら、どんな素敵なプレイだって楽しめなくなってしまう。

 それって違うのだ!

 SとMは互いに引き合う世界の両極。

 それは限りなく自由で、でもお互いを縛りあってなくちゃいけないんだ!


「張井……あんた……」


 ちょっとマドンナが目を潤ませている。

 まあさっき泣いてたし。


「えっ、マジっすか!? さっきのでうるっと来たっすか!? おっかしいっすよー!? いい事言ってるふうだけど実際はただの変態じゃないっすかー!?」


 ぎゃあぎゃあ騒いでいる外野は放っておこう。


「マドンナ、僕は、君と委員長を助ける為にこの町に来たんだ! 多分。最初は何も考えないでカッとなってやってきたけど、今となってはそう運命付けられてるって思う!」


「あたしと、井伊を助けに……!?」


「そうだよ。だって、そうじゃなきゃ、みんな一緒に元の世界に帰れないだろ?」


 僕は自分的にはかなりいけてるイケメンスマイルで言った。


「一緒に帰ろう、マドンナ!」


「う、うう、あ、あたしは……」


 うん、さすがにここだと、新聞屋も空気を読んで攻撃してこない。

 なんで彼女は僕を諸共葬ろうとするんだろうなあ。

 しばらくマドンナは返答に時間がかかりそうなので、僕は暇つぶしにステータスをチェック。

 ここ最近、結構ばたついたり、綺麗なおねえさんにビシバシやられたりしたので、強くなっている実感がある。



名前:張井辰馬

性別:男

種族:M

職業:M

HP:24601/13977→67335

腕力:3→6

体力:96→321

器用さ:5→8

素早さ:3→6

知力:4

精神:21→163

魔力:78→115

愛 :104→344

魅力:21→25


取得技:ダメージグロウアップ(女性限定、容姿条件あり)

    クロスカウンター(男性限定、相手攻撃力準拠)

    全体カウンター(男性限定、固定ダメージ)

    河津掛け(相手体重準拠)

    反応射撃(射撃か投擲できるものが必要、相手攻撃力準拠)

    全体ガード



 このうち、HPで三万くらいは新聞屋の魔法で削れた。で、戦闘が終わって一万強HPが増えた。

 相変わらずおっそろしい火力だなあ。どんどん強くなってるから、僕も余裕が無いよ。

 大体この成長の九割くらいは、新聞屋からの同士討ちで上がってる感がある。

 諸共にやられないうちに、もっと強くならねば!


「へ……返答は、ちょっと待ってなさいよ」


 ようやくマドンナは立ち上がり、それだけ言った。


「わかった!」


「今度は……きちんと痩せてくるから」


 おお!

 今のちょっとぷくっとしたマドンナは可愛いけど、僕の知る彼女はもっとすらっとしていて、育ちのいいお嬢様っていう感じの女の子だ。

 そういうマドンナにこそいじめられる価値があるのだ。

 僕はマドンナのダイエット大歓迎だった。


「なにいっ!! 張井くん、もしや間戸さんを逃がすっすか!? ここで仕留めておいた方が後々楽になるのにーっ!!」


 むぎいーっと叫ぶ新聞屋である。

 だけど、マドンナにせよ委員長にせよ、やっつけてしまうには惜しい! いや、あれほど僕をいじめる才能を持った美少女が二人いなくなるなんて、世界の損失だ!

 あと、なんかマドンナが人を殺させたり、委員長が人を殺したりしているみたいなんで、その辺はおいおい対策を考えよう。

 難しい事は後回しだ。


「悪かったわね。あと、裸でそんなもの見せびらかさないでよ」


 ちょっと頬を赤くしてマドンナは言い、


「弱い魔法しか使えないけど……さっきのお礼にかけといてあげるわ。”癒しの水(ヒールウォーター)”」


 じんわりと体にしみこむ感覚。

 無理なく、ちょっとだけHPを回復する魔法なんだろう。

 だけど、この時だ。

 今まで無駄能力値だとばかり思っていた、僕の愛が発動した!


『愛による補正がかかります』

『回復率アップ!』

『HPが20回復! 追加で最大HPの20%が回復します!』


 ええと、つまり?

 20+13467回復だ。

 おお!!

 愛は、回復魔法をかけられたときの回復率が上がるのだ。

 今まで新聞屋の回復魔法は、有能すぎて一気にHPが直るので、実感できなかったんだなあ。

 だけど、新聞屋は本気でいつ敵に寝返るか分からないので、マドンナはぜひ味方にしておきたいなあ。



 さて、マドンナが去っていき、逃げ去っていた人たちも戻ってきた。

 マドンナに操られていた人たちは、みんな僕のカウンターを食らって伸びている。


「こいつらどうしましょうか」


 町の人が聞いてくる。


「うーん、そうだなあ。もしかすると話が分かる人かもしれないから、手当して閉じ込めて、意識が戻ったら色々聞いてみよう」


「ふっふっふ、あっしの臣民が増えるっすね! ははは、人徳っすなあ」


 そんな訳で、委員長とマドンナと再会した僕である。

 二人とも無事でよかったよかった、というところなんだけど……。


 僕は辺りを見回す。

 せっかく作ったSMタウンが完全に更地……いや、更地どころかクレーターだなあ。


「復興しなくちゃ」

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