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第十二話:ドMとようじょと砂漠の残念プリンセス

「空からやってきたあなたたちは何者ですか! 神様の使いですか! これこそレヴィアタンの加護ですね! 神に愛される私!」


 なんだか砂丘の上で、自己陶酔しながらぴょんぴょん飛び跳ねてる。

 あれって凄く危険そうなんだけど。


「自己完結してるっすよ。おーい! あっしたちはそんなレビアたんとかいう萌えキャラじゃないっすぞー!!」


「えー? なんですってー?」


「だーかーらー、あっしたちはー」


「えー? 反響して、よく聞こえなー……アギャー!」


 あ、転げ落ちてきた。

 身を乗り出して聞こうとするからだ。


「あれはばかですか?」


「グレモリーちゃんの言うとおりばかだと思うなあ」


 僕たちは落下してきて地面に突き刺さっている彼女のところまで行った。

 足がひくひくしているから生きているっぽい。

 おー、長いスカートみたいなのがめくれて、下着が丸見えだ。


「張井くん、ガン見するのはいかがなものかと思うっすが、忠告したところで所詮張井くんなので無駄っすな!」


 よく分かってらっしゃる。

 でもちょっとグサッときたよ!


『魔力がアップ!』


 僕と新聞屋は、右足と左足を持って、せーのでその女の子を引っこ抜いた。

 出てきたのは、褐色の肌をした、スレンダーな女の子だ。

 髪の毛が銀色で、なんとも特徴的。くるくる目を回していて、瞳の色は綺麗な紅色だった。

 なるほど、胸は無いけどかなりの美少女だ。新聞屋に匹敵する。

 そして垣間見た残念さも新聞屋に匹敵しそう。


「張井くん、何か失礼なことを考えてるっすな!」


「ハハハ、そんなことはありませんぞ」


「口調がおかしいっす! おのれ!!」


「いたいいたい! そのゴボウみたいな木の棒どこから取り出したの!」


「なぁーにをやってるですか!? はなしがすすまないのですー!!」


 むきぃー! とグレモリーちゃんが怒った。

 オーケー、巻いて行こう。

 僕は右から、新聞屋は左から、目を回した彼女のほっぺたをぺちぺちした。


「おーい、目を覚ましてー」


「起きるっすよー。起きて事情を説明するっすー」


「う、うーんうーん」


「起きないっすねえ。これは頭を打ったっすかね」


「たぬきねいりにきまっているです! こら、おきるです! おきないと、グレモリーがにてたべるですよ!」


「ひいっ!」


 気持ちいいくらい勢いよく跳ね起きた。


「わっ、私は美味しくないですよ!? そ、そうだ、こっちにいるムチムチした女の子の方がきっと美味しいですからどうぞどうぞ!!」


「グエーッ! あっしを押すなっすー!? それにあっしは標準体型! ムチムチして見えるのはあんたが鶏がらみたいに痩せてるからっすー!!」


「なんですってー!! 私は標準体型ですよ! 私が言うんだから間違いないです! だからあなたはぽっちゃりなんです!!」


 アッー!

 この娘、新聞屋の同類だ。

 フードの下は、育ちのよさそうな顔立ちをしていて、あちこちに煌びやかなアクセサリー。多分、使っている宝石も本物だ。

 高い地位にある人みたいなのに、凄く卑屈。


「ひめさまあー! おー! 生きとったかあー!」


「さすがひめさまじゃー! わっはっはー」


 なんか部下らしい人たちが上にいて、盛り上がっている。

 主君っぽい子が下に落ちたのに、あんまり心配してないのはどうなんだろうなー。


「気を取り直して、私はベレッタと言います! これでもガルム首長国連邦の首長の娘なんですよ! プリンセスなんですよ! 崇め奉っていいんですよ!」


「おおー、プリンセスかあ。なんかエカテリーナ様と随分違うなあ」


「はあ? エテリーナなんていう人と一緒にしないでください! 私は私なんです! 凄い私なんですよ!」


「おお、言葉の意味は分からないっすけど、なんかすごい自信っすなあ」


「それで、あなたたちは何者なのですか!」


「は、実はこれこれこうこう」


 僕はベルゼブブのくだりを説明。

 すると、ベレッタはわなわなと震えだし、ははーっと僕たちにひれ伏す。

 ええーっ!?


「ひいーっ!! ま、ま、まさか黒貴族ゆかりの方だとは思いもよらずーっ! も、もう、これはあれです! 私は悪くありません! そう、これ、このタヌキ耳のプニプニが悪いんです!」


「ギエーッ! あっしの耳を引っ張るなっすー!! あんた、あっしに恨みでもあるっすかー!?」


「何を言うんですか! この私に盾にされるんだから凄いことなんですよ!」


「凄くないっすよ!? あんたがあっしの盾になるがいいっす!!」


「……こいつら、ふたごです?」


 グレモリーちゃんが実に困った顔をしている。

 悪魔ようじょを困らせるなんて、悪い大人もいたもんだ。まだ中学生だけど。

 僕はこの場唯一の男として、責任というやつを果たすことにした。


「おーけー、待ちたまえべいびーたち。この争い、僕があずかろぶげらっ」


 止めに入った僕の顔面に、二人のパンチがめり込んだ。

 素晴らしくタイミングの合ったパンチに、僕の体が宙を舞い、頭から地面に落ちてバウンドして5メートルくらい転がっていく。


『HPがアップ!』

『体力がアップ!』

『愛がアップ!』

『魅力がアップ!』


「ちょっと張井くん! 邪魔っすよ!! あんまり邪魔すると殴るっすよ!!」


「ひいっ! い、今のは私が悪いんじゃないですよ! 悪いのはこっちのプニプニですよ!」


「きちゃまー!!」


 僕が起き上がると、新聞屋とベレッタの二人が、駄々っ子パンチで一進一退の戦いを繰り広げていた。


「分かった分かった。じゃあ聞いてないと思うけど、一応説明するよ。僕たちはこのグレモリーちゃんの魔法でここまでやってきたんだ。で、落ちたら爆発が起きて、砂がなくなって地肌がむき出しになったんだよ」


「ほうほう」


 いつの間にか降りてきていた、ガルム首長国連邦とかいうところの家臣みたいな人たち。

 彼らは僕の言葉にふんふんとうなずく。

 姫様は放置するみたいだ。

 いっつもこんなことばかりやってるんだろうなあ。


「それで、皆さんは何しにここへ?」


「はあ、俺たちは、姫様が、レヴィアタン様がこの地に光臨される夢を見たとかで、無理やり連れてこられてしまってなあ」


「あー、大変でしたねー」


「坊主もさっき、凄い勢いで殴り飛ばされてたが大丈夫なのか?」


「あ、はい、僕は美少女に殴られると気持ちよくなる体質なんで」


 なんか気持ち悪い者を見る目で見られた。


「むーっ」


 そして、何故かグレモリーちゃんがむくれている。


「どうしたんだい、ようじょグレモリーちゃん」


「だれがようじょです! グレモリーは、だれもあくまであるグレモリーを、ちぃっともこわがってくれなくて、ふまんなのです! いちどぶっとばすです!?」


「ハハハ、グレモリーちゃんはちっちゃくて可愛いからね! 悪魔だって言っても僕は怖いというよりは、むしろハグしてクンカクンカしたいくらぶぎゃらばらっ」


 飛び上がったグレモリーちゃんの、真空飛び膝蹴りが僕の顎を打ち抜いた。

 僕はそのまま、このクレーターを飛び越えるくらい上空に吹き飛ばされて、頭から地面に落ちてきてさくっと刺さった。


『HPがアップ!』

『HPがアップ!』

『HPがアップ!』

『体力がアップ!』

『体力がアップ!』

『愛がアップ!』


もご(もう)むげごごーがんが(グレモリーちゃんたら)もめめまごごごー(照れ屋なんだから)


「なにをいってるかわからないですけど、まったくこりてないことはわかったです!」


 結局、この一撃でグレモリーちゃんは、新聞屋、ベレッタ、家臣一同にその力を見せつけ、きちんと悪魔として恐れられるに至ったのである。


「それよりも、たしかにそのおんなが、ゆめみでみたのは、たしかかもです!」


「えっ、私が夢で見たのが!? やっぱり! えっへん!! さすが私ですね!」


 あっという間に偉そうになるベレッタ。


「くう、このぺたんこめ、調子にのるなっすよぉ……!」


「はなしをきくです!!」


「ひっ!」


「ははーっ!」


 脅かされた時の反応は違うね。

 ベレッタは露骨に怯えてへたり込むし、新聞屋はすぐに土下座する。

 僕? 僕は悠然と立ちながら、グレモリーちゃんの頭を撫でているのだ。


「……おまえ、ほんとうにこわいものなしですね……?」


 さすがにグレモリーちゃんが、呆れを通り越して一種の軽蔑すらにじんだ目で僕を見る。

 ようじょに見下される!!


『魔力がアップ!』

『魔力がアップ!』

『魅力がアップ!』


「みるです! このむきだしになった、じめんにえがかれたもんようを!」


 グレモリーちゃんは、いちいちたどたどしい感じで喋るから可愛い。

 頑張って難しいことを言おうとしてるところとか可愛い。


「こ、これはーっ」


「ふっふっふ、しっているようです?」


「いえ、さっぱり知らないですね!!」


 胸を張るベレッタ。グレモリーちゃんは彼女を無視することにしたらしい。


「これは、グレモリーたちあくまのあいだでも、でんせつになっている、レヴィアタンのもんようです! つまり、ほんとうにいるですよ、このしたにレヴィアタンが!」


「おおおおー!」


 一同、どよめく。

 僕としてはどうでもいいのだが、得意顔のグレモリーちゃんが可愛いので、驚いてあげる。

 するとようじょはさらに得意げになった。


「なんなら、このグレモリーがたすけてあげなくもないです! これはあくまにとっても、おおきなはっけんです!」


「大発見っすか!? 金のにおいっすかね!?」


「悪魔の手を借りることができるなんて! さすが私の人徳ですね!」


「うんうん、よく分からないけど、いいんじゃないかな」


 適当に相槌を打つ僕だったけど、気がつくとこの面子で地下にもぐってみようということになっていた。

 えっ、本気で地底探検とかするの?

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