敵性勢力
※グロテスクな表現がありますです。
お気をつけあそばせっ
目が覚めると子はまだ寝ていた。
つついて起こすとビックリしてる。かわええ。でも噛むな。痛くないけど。
とりあえず、肉を与えると食べることができたので良しとしよう。なかなか懐かないだろうが、辛抱しよう。母親をなくしてすぐに懐くとは思えない。それも、命を懸けた母親の愛だ。
食べてる子を撫でる。ちょっと唸ってるのもキュートだ。
ハギメさんのところに行くと剥ぎ取れてなめした剣歯虎の皮を貰う。
皮を寝所に投げ込むと子が匂いを一通り嗅いで回るとまたコテンと寝た。
2、3箇所の罠を見て回るとデカイ鹿が二匹掛かっていた。それぞれ2匹とも一応木に吊るして血抜きをすると、罠を修理する。
2匹を両肩に担いで帰る。
村に帰ると広場の方がなにやら騒がしい。
見たことのない(ゴブリンの顔を見分けられるようになっていた)ゴブリン達が武器を手に村長に食って掛かっていた。見たことのないゴブリン達の中に村長と同じクラスのボブゴブリンがいるのがわかった。
「村長、どうした?」
「何故人間がいる!?」
「どうもこうも、我々を追い出した奴等が来たんだ」
黙殺とはこういうことだろう。目を白黒させてビックリしてやがる。
話を聞くと奴等の目的は俺達が獲った獲物を寄こせという要求だった。
「嫌だと言ったら?」
「お前が何故我々の言葉を使えるのかわからんが、お前諸共皆殺しにするだけだ。」
「自信満々だな」
「素手の人間には負けん」
このボブゴブリンニヤニヤ笑ってやがる。
「村長?」
「争いは好まん者が多いのですがな~。しかし、シュテン殿も居られますし、反撃しますか。」
おもむろに身近にいる敵ゴブリンに近づくと、抜き打ちで切り殺した。ボロボロの鉄剣ではなく、この前の人間たちが持っていた武器を使っていたのだ。ゴブリンの筋力では扱いきれないが、ボブゴブリンだと何とか使えるらしい。
敵のゴブリンは口々にギャーギャー騒ぎ始めると斬りかかってきた。接近戦用プログラムが働かせるまでもなく、ボロボロの剣を片手で受け、片手で胸を抉った。噴出す血液をあえて全身に浴び、にやりと笑ってみせる。一瞬で敵性勢力のリーダー(敵ボブゴブリン)に近づけるのにもかかわらず、あえてゆっくりと歩く。
掛かってくる敵ゴブリンは躊躇無く喉や胸など血の噴出しやすいところを狙って攻撃する。
左から槍で突っかかってくるゴブリンの頭に矢が刺さった。右の盾持ちの喉には槍が刺さる。
「どうした?かかってこいよ。てめぇが売った喧嘩だろうが?あぁ!?」
安っぽい挑発をしながら、手身近にいるゴブリンの攻撃を無視し、頭と肩を掴むと脊髄ごと頭を引っこ抜く。
怯えろ!竦め!俺に怒りを向けろ!
俺に怒りが向けられてる間は、意識を向けている間は仲間に攻撃が行くことは無い。戦場とゲームで学んだことだ。
数人の仲間を捨ててボブゴブリンが逃げようとした。《ダッシュ》すると手足を砕く。
それと持っていた武器を持たせて拠点に帰らせる。喧嘩を売ったものがどうなるか。一罰百戒をもって当たる。
降伏したものは捕虜として遇する。それが俺が決めたことだった。
「村長、怪我人は?」
「無しですよ。シュテン殿は?」
「あの程度で傷など負うはずが無い」
「・・・血、洗ってきた方がいいでしょうな、モテマセンゾ」
「それは困ったな。じゃ、跡片付けよろしく!」
笑顔で振り向くとヤリとユミと戦っていたゴブリン達が『え、俺達だけで?』って顔をする。
いや、しょうがないじゃん?ハギメさん達やゴブリンの子供や剣歯虎の子に怖がられると泣くよ?マジで。
小川に着いて体と服を洗ってから気がついた。
着る服が無い!