ALIA、どうしてあなたはアリアなの?
「すまない。俺を責めたいだけ責めてくれ。恨みたいだけ恨んでくれ」
「いいえ、殿下。私はアリアなら、あのアリアなら殿下をお渡ししてもいいと思っておりますわ」
これは本当。アリアにならばこのクランシュベルト公爵令嬢である私の代わりに王太子殿下の婚約者の地位を渡しても構わないと思っている。
王太子は、顔を歪めてサラ……と呟き、そして唇を合わせた。
これで乙女ゲーム「ALIA」の王太子ルートのメインストーリーは終わった。王太子はサラを捨ててアリアを時期王太子妃に据える。
だがアリアよ。気づいてるだろうか。このエンドはハッピーエンドではなくてトゥルーエンド②だってことに。
※※※※
そもそも、サラ=クランシュベルトは王太子ルートの悪役令嬢なるものではない。それは、ナターレ=アイチェワーレ候爵令嬢の役割でさっきしっかり破滅させられたのをみていた。なせ、サラではなくて、ナターレなのかと言うとこれは単にサラの身体が儚いからである。
サラは身体が弱く、王太子妃としての公務、お世継ぎの見込みがとても低く王太子妃としての資質で賛否両論だった。だから、アイチェワーレ候爵令嬢ナターレが次候補と目されていたのだ。
しかし、このナターレ嬢。平民出自のアリアが気に入らなかったようで、イジメるイジメる。そのアリアを庇ったのが王太子殿下だった。当然、ナターレ嬢は逆上して乙女ゲーム定番の破滅ルートに真っ逆さま。
王太子殿下は、アリアが王族の落し胤……しかも、説明は省くが両親ともに生粋の王族だったことを突き止め、アリアを王太子妃へと見初めた。
ゲームでは、卒業したあとアリアは正式に王太子と結婚して女児を授かり、精力的にボランティアや医療発展のために尽力を尽くし幸せに暮らすというトゥルーエンドだった。
そう。トゥルーエンドなのだ。確かにもう一つ友情エンドもあるにはあるが、こちらもハッピーエンドではないのだ。
気づいた人は気づいただろう。この世界、女王は認められてない。公務に尽力を尽くすアリア。けれどこれは乙女ゲーム、ハッピーエンドなら『仲睦まじく暮らしました』のはずなのだ。
私がそれに気づいたのは王太子ルートのバッドエンドに挑戦したときのことだった。
サラが死んだのだ。アリアがナターレに余計な一言を言って、ナターレがサラを追い詰めて身体を壊しそのまま亡くなってしまった。
嘆き悲しんでいた王太子にそれを告白してしまうと大幅に好感度が落ちてしまいビックリした。慌てて、バッドエンドを狙っていたはずなのに好感度をあげる選択肢を選んでしまいあれ?王太子の笑顔がハッピーエンド(本当はトゥルーエンド)と違うぞ!となった。
そう。アリアが王太子を本当に攻略するにはサラを殺さなければいけなかったのだ。
サラとして生を受けて、そのことを思い出したとき殺される!と怯えるよりも、そう。結構な時間を生きれて、大人になる前に死ぬのねとストンと受け入れてしまった。さすがに一度に受け入れたわけではなくて、時間をかけて徐々に受け入れていったのだけど。
それに抵抗はなかった。なにしろ生まれてこのかた、常に死と隣り合わせだったのだから。
※※※※
学園を卒業して3年の月日が経った。
王太子妃は半年前に姫を産んだ。やはりゲーム通りだった。
「サラ、加減はどうかな」
テラス越しに外を眺めていると後ろから声がかかって思わず振り返った。
「王太子様。まあ。どうなさいましたの?」
侍女達は静かに壁際に控えていて、王太子が堂々と私に近づいてきた。
「私の可愛い妃とそのお腹のややの様子を伺いにきたよ」
「まあ。今日はとても体調がよろしいのです、殿下。ご心配なさらないで」
私は、王太子が婚姻した一年後に側妃として入宮した。しかし、一度も正妃アリアを診ていない。
「それはよかった。ここは静かかい?」
「ええ、とても。侍女たちもよくしてくださいますわ」
侍女たちがにっこり微笑む。
アリア、気づいているかしら。
正妃は、パーティやお茶会の指揮や公務があって大忙しだけれど側妃にはそのような義務はないことを。席は用意されていても、体調が悪いの一言で出席しなくても良いことを。王太子夫妻が住まう宮殿は人がひっきりなしに出入りするけれど、離宮はひっそり佇んでいることを。
王太子様がそうするために『王太子妃』を探していたことを。
アリア、あなた転生者なのにどうしてこっちを選んじゃったの。私はいいけどあなた、意味ないじゃない!
昔からおっちょこちょいだと思っていたけれど、今も変わらないのね。
どうせ、この離宮に遊びに来たくても迷子になって来れないのよね。
アリア。
私が死ぬ前においでなさい。説教してあげるわ。




