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3-4

 そうか、とため息をつくアレン。ハルはそれ以上何も言わずに、部屋に戻る旨を伝えて食堂を後にした。

 アレンとの会話に集中していたからだろうか。ハルは、ティアナがずっと無言であったことと今にも泣きそうな表情になっていることに、全く気が付かなかった。



 部屋に戻ったハルは、ここを出るにあたり忘れ物がないか確認をする。といっても、森から持ち出してきたものは衣服ぐらいのものなので、アレンから譲渡された剣を持っているかの確認になるだけだ。

 忘れないようにするため剣をしっかりと握っておく。アークとヴォイドから気が早いと笑われるが、忘れてしまうよりはいいだろう。


 ――心配しなくても、忘れそうになったら言ってあげるのに。

 ――実は気に入っていたりするのか?


 ハルは首を傾げながら剣を抜いた。確かに今まで持ったどの剣よりも手に馴染みはするが、気に入るという感覚はよく分からない。手放したくない、とは思うが。自分の感情に少し考えていると、部屋の扉が何度か叩かれた。


 ――なに?

 ――ノック。簡単に言ってしまうと、中にいますか、みたいなもの。ティアじゃないかな?


 ティア、と聞いて、そう言えば食堂でも後の方ではほとんど話をしていなかったことを思い出した。少しだけ反省しつつ、扉へと向かう。開けると、アークの予想通り、ティアナが立っていた。不安そうにしていたが、ハルの顔を見て表情を和らげた。


「ハル君。少しお話、しませんか?」

「ん……。いいよ。どこで?」

「この部屋でも大丈夫ですか?」


 ハルは小さく頷くと、ティアナのために扉から離れた。そのままベッドへと向かい腰掛ける。部屋に入ってきたティアナは扉をしっかりと閉めた後、ハルの方を見て、


「隣……。いいですか?」


 とても小さな声だった。どうしたのかと首を傾げながらも、ハルは頷いて了承する。ティアナは顔を輝かせると、ハルの隣に腰掛けた。

 そのままティアナは黙り込んだ。どうしたのかと不思議に思いながらも、ハルは急かすようなことはせずに静かにティアナの言葉を待つ。やがて、ティアナが意を決したかのように頷くと、ハルへと向き直った。


「ハル君は、本当に森に帰るんですか?」


 思わずハルが言葉に詰まり、すぐにそれを取り繕うために表情を消す。アークとヴォイドが呆れているのが分かるが、今回はそれも無理のないことだ。

 隠し事があると分かる反応だったのだから。

 ティアナですら、ハルが答えに詰まっていることに怪訝そうにしている。


「帰る」


 短く、改めてはっきりとそう答える。


「その考えは……変わりませんか?」

「変わらない。帰る」


 そうですか、とティアナがため息をついた。肩を落として、そうですよねと小声でつぶやく。どうしたのだろうかと思いもするが、今はそれよりも確かめたいことがある。


「ティアはこれからもギルドの仕事をするの?」


 ハルが聞くと、自分のことを聞かれたのが意外だったのだろう、少しだけ目を丸くして、すぐに嬉しそうに笑った。


「いえ、三日後から学校が始まるので、それに通うことになります。ギルドの方は、休みの時だけですよ」

「学校?」

「はい。興味あります?」


 ティアナが目を輝かせるが、しかしハルが首を振ると項垂れてしまった。

 アークの知識、つまりは古い知識によるものだが、学校というものは知っている。子供たちが一カ所に集まって学ぶ場所だ。これはアークが魔王討伐後間もなくに、半ば無理矢理に作らせたものらしい。


 ――今はどんなものになっているか気になるところではあるけど。まあ後の楽しみだね。


ロストソングにはまってます。睡眠時間が……!


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ではでは。

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