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3-2

「今日はこちらをどうぞ」


 そう言ってメイドが渡してきたのは、ハルがここに来た時に着ていた服だ。綺麗に洗濯されてはいるが、貴族の家には似つかわしくない簡素な服。ハルは驚きながらもそれを受け取った。


「いい……の?」

「はい。では失礼致します」


 深く一礼して退室していく。ハルは首を傾げながらも、慣れ親しんだ服に着替えて食堂に向かう。


 ――一応聞いておくけど……。二人とも、何もしてないよね?

 ――ああ、大丈夫。

 ――何もしていないとも。


 しっかりと答える二人に、ハルはならいいけど、と頷いた。


   ・・・・・


 ――嘘は言ってない。

 ――同じくだ。お前は大丈夫だと言った。何が大丈夫かは言っていない。

 ――ヴォイドは本当に何もしていない。うん、完璧だ。

 ――まあ……。知られた場合は、屁理屈だと怒られそうではあるがな。


   ・・・・・


 食堂ではすでにアレンとティアナが席についていた。昨日も思ったが、この二人も早起きだなと感心する。ハルも席につくと、ティアナが微笑んだ。ただその笑顔には陰があり、疲労も見て取れる。


「おはようございます、ハル君」

「おはよう、ティア。寝てないの?」

「いいえ、寝ましたよ……。ふあ……」


 言った側から大きな欠伸をして、ハルにじっと見られていることを思い出したのか顔を赤らめた。ハルの責めるような視線から逃れるために目を逸らす。ハルは何をやってるのか、と疑問に思いながらも、今度はアレンへと向き直った。

 アレンはハルと目が合うと、何故か一瞬目を逸らした。しかしすぐに首を振り、視線を戻す。怪訝そうなハルへとアレンも微笑みかけてきた。


「おはよう。昨夜はよく眠れたかな?」

「うん……。ぐっすり」


 それは良かった、とアレンが笑うが、どこかぎこちない笑い方だ。やはり昨夜のうちに何かあったのかもしれない。タグラスの妹やその他諸々のことをアレンとティアナに丸投げしたのはまずかっただろうか。

 ハルが考え込んでいる間も、使用人たちは平常通りだ。朝食がハルたちの前に並べられる。今日は丸いパンと、個体なのか液体なのかよく分からない、どろどろのもの。それは小さな皿に入っている。


「なにこれ……?」


 ハルが不思議そうに言うと、ティアナが教えてくれる。


「ジャム、です。簡単に言うと、果物と、あとは砂糖とかを煮詰めたものですよ」

「へえ……」


 なるほどと頷くが、当然ながらハルはほとんど理解していない。それに気づいているアークとヴォイドは苦笑するしかない。

 ハルはスプーンでパンにジャムをつけて、恐る恐るかじってみた。


「……っ!」


 スプーンでジャムをごっそりととると、パンに塗って勢いよく食べていく。アレンとティアナはそれを微笑ましそうに見つめていた。


「ハル君。お代わりはいるかな?」


 アレンのその問いに、ハルは口を一杯にしながら何度も頷いた。


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ではでは。

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