表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/49

3-1

 最初にハルの元にやってきたのは、ヴォイドだ。


 ――お前か、俺を呼んだのは。


 自分には理解できない儀式を終えて眠りについた夜、突然そんな声が頭に響いた。突然の声にその時ばかりは本当に驚いたものだ。自分が戸惑っていると、声は苛立たしげに続けてきた。


 ――答えなければ分からんだろうが。まあいい。記憶を見るぞ。


 その言葉の直後、激しい頭痛に襲われた。悲鳴を上げそうになるのを必死に耐える。それほど時間を置かず、痛みはひいていった。そしてまたすぐに、あの声が聞こえてきた。


 ――なんという……。


 先ほどとは打って変わり、声はどこか悲痛そうだった。


 ――名前を、聞かせてくれ。


 声の問いに、少年は頭を軽く振りながら答える。


「晴斗」


 ――声に出さなくてもいいぞ。はると、か。俺はヴォイドだ。しばらくお前の体に居座らさせてもらう。


 それがどういう意味か分からなかったが、断る理由はないので頷いておいた。



 次に訪れたのは、それから一週間後。


 ――急に呼ばれたけど一体何が……。ヴォイドの気配まであるし。


 次の声はどこか軽い調子のものだった。ヴォイドの呆れたような声が続く


 ――お前も来たのか。まさかこんな形で会うことになるとは……。

 ――ああ、久しぶりだね、ヴォイド。今回の悪巧みは?

 ――そんなものをしたことはない。していたとしても、今回は別だ。


 勝手に盛り上がる声二人。二人と言っていいのかは分からないが。やがて、今回出てきた声が、では改めてと咳払いをした。


 ――僕はアークだ。よろしく。では早速だけど、記憶を見せてもらうよ。


 この声たちはどうしてこう簡単に記憶を見られるのだろうか。そんなことを思っていると、またあの時の頭痛に襲われた。しばらく耐え、痛みがひくのを待つ。今度はどんな反応を示すのだろうと思っていると、


 ――まさか……。


 アークの声は、震えていた。まさか、まさかと何度もつぶやいている。


 ――どうした、アーク。

 ――いや……。気にしなくて、いい。


 気になるに決まっているだろう、とヴォイドがため息をつき、自分は心の中で強く同意した。気にしないでとアークが朗らかに笑いながら言う。だがそれは、自分でも分かるほどに作り物めいていた。


 ――ヴォイド。先に宣言しておく。

 ――ふむ。聞こう。

 ――僕は今後、何があろうとこの子の意思を尊重する。僕の力が及ぶことならどんなことでもする。僕はこの子に、全面的に協力する。


 どうして急にそんな話になっているのか。よく分からないが、しかしヴォイドは何も聞かずに頷いたようだ。


 ――お前が言うまでもなく、俺もそのつもりだ。

 ――へえ……。意外だね。


 今度こそ、アークは楽しげな笑い声を上げた。それじゃあ、と続ける。


 ――改めてよろしく。晴斗、ヴォイド。何かあれば、遠慮なく相談してくれ。



 アークとヴォイド。勇者と魔王との出会い。ハルはこの出会いを、決して忘れることはしないだろう。


   ・・・・・


 朝。ハルはいつも通りに朝日が昇ると同時に目を覚まし、ベッドの上でゆっくりと伸びをする。ベッドは仕方なく使っているが、ハルにとっては柔らかすぎて正直気持ちが悪い。ハルはベッドから出ると、体をほぐすために軽い運動をして、その後に静かに部屋を出る。


「おはようございます、ハル様」


 昨日と同じメイドがすでに扉に前に立っていた。ハルはげんなりとしつつも、すでに諦めもあるのでため息をつくだけにとどめる。メイドは、では着替えましょうとハルを部屋に戻した。


3開始です。


誤字脱字の報告、ご意見ご感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ