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2-21

 ハルは剣に魔力を纏わせ、地面に突き刺す。瞬時にイメージを具現化。剣を包み込んでいく氷は地面にまで到達し、そして今度は一気に上昇、氷の壁となる。火球は氷の壁に衝突すると、そのまま霧散した。


「は……? まさか、詠唱破棄、か?いやだが、こんな魔法見たことも……」


 氷の壁に阻まれたタグラスからはハルの姿が見えないらしく、呆然としているようだった。こちら側にいるティアナには当然ながらしっかりと見えており、ティアナはタグラスとは違う理由で呆けている。ティアナの視線は、ハルが突き刺した剣に注がれていた。


「もしかして……魔法剣……? ハル君がどうして……」


 そう言えば言っていなかったことに今更ながら気が付いた。何か説明した方がいいのかなとも思うが、うまく言葉が見つからない。


 ――ハル。せめて相手をもう少し見ようよ。かわいそうだよ。


 アークの苦笑にハルは思考を中断して、タグラスがいる方へと向く。氷の壁に再び衝撃が走った。また何か火球でもぶつけたのだろうか。


「やっぱり……この程度……」


 ハルはため息をつくと、地面から剣を抜いた。途端に崩れていく氷の壁。その隙間から見えるタグラスの顔は、愉悦に歪んでいた。自分の魔法で破れたとでも思っているのだろう。ハルは手を正面へと向ける。

 アーク曰く、魔法とは詠唱によって魔力の流れをコントロールし、形を成すものらしい。

 ヴォイド曰く、魔法とはイメージであり、魔力さえあれば望めば何でもできる、らしい。

 そしてハルの魔法の師匠は、魔王ヴォイドである。

 ハルの魔力が形を成す。形成されるのは拳大ほどの小さな氷の槍。それを氷が崩れきる前に射出。狙い違わず、タグラスの肩を打ち抜いた。


「は……?」


 何が起こったのか分からなかったのだろう、ヴォイドが間の抜けた声を漏らし、自身の左腕を視線で追う。空中に舞う自分の左腕を。


「あ……あがあああああ!」


 タグラスの悲痛な悲鳴が響き渡る。だがハルは容赦などしない。再び氷の槍を形成すると、今度は右肩を貫いた。空中に舞う右腕。ぼとり、と左腕が先に落ち、次いで右腕が地面に落ちた。


 ――いただこう。

 ――あ、こら。


 ハルの影が伸びてタグラスの両腕を呑み込む。ハルは自身のコントロールにないその影を見ていたが、仕方ないな、と笑うだけだ。


「俺の、俺の腕がああ!」


 ハルはつまらなさそうにタグラスを見つめていたが、やがてゆっくりと歩き始めた。タグラスにゆっくりと歩いて行く。剣をゆらゆらと揺らしながら、無表情の仮面をかぶって、ただただ歩く。


「な、なんのつもりだ! 来るな!」


 タグラスが叫びながら逃げようとして、腕がないことでバランスを崩したのか転倒してしまう。起き上がることができず、けれど必死にハルから逃げようと、地面を這いずり始める。ハルはそれを冷たく見据え、そして、


「あぎゃ!」


 タグラスの頭を踏みつけた。


 ――おお、怖い怖い。

 ――誰の教育だろうね。全く。

 ――俺のせいのように言うな。共犯だろうが。


 ハルはタグラスの髪の毛を掴むと、顔を持ち上げた。涙に塗れたタグラスの顔はひどく情けないものだ。ハルは剣をタグラスの首筋に当て、言う。


「誰の指図だ」

「ぐ……。言っても、分からんだろうが……!」

「ぼくが分からなくても、ティアやアレンなら分かる」


 タグラスは言葉に詰まり、しかし嘲るような笑みを浮かべた。驚くハルへと、タグラスが言う。


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ではでは。

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