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2-19

 ――今はそんなこと言ってる場合じゃないけど。魔族って強いの?


 緊張感のない二人に呆れながら、ハルは二人に問いかける。それに答えるのは、ヴォイドだ。


 ――ああ、強いぞ。少なくとも魔の森の魔獣程度にはな。

 ――……あ、そう。


 最初の言葉に緊張したハルだったが、続いた言葉に思わず脱力してしまった。

 魔族が顔を上げる。虚ろな瞳でハルとティアナを睨み付ける。ティアナはひっ、と小さな悲鳴を上げて後じさり、そしてハルは、平然と剣を構えた。


「ハル君! 逃げましょう!」


 悲鳴のように叫ぶティアナに、ハルは大丈夫だと首を振った。


「大人しくしてて」


 言うが早いが、ハルは目の前の魔族に一瞬で距離を詰めた。目を見開くその魔族の首に、剣を突き刺す。剣を引き抜くと、首から血を吹き出した魔族が倒れ伏した。そして次はその隣の魔族。同じように剣を突き刺そうとして、硬い何かに阻まれた。


 ――状況判断はできるらしい。障壁だ。

 ――まあ、意味はないね。ハル。


 アークの呼びかけに、ハルはすぐに魔力を剣へと巡らせた。剣が高密度の魔力の氷に覆われ、そしてその剣は魔族の障壁をいともたやすく突き破った。再び魔族の首に突き刺さる剣。


「な……!」


 小屋の方から聞こえてくるタグラスの驚きの声。ハルはそちらを一瞥しただけで、またすぐに次の獲物へと走る。残り三人の魔族のうち、二人はティアナへ、一人はハルへと向かってきた。


 ――ハル。先にあいつらを。

 ――ん。


 標的を変えてティアナへと手を伸ばす魔族二人へ急ぐ。ハルを狙っていた魔族が、そうはさせまいと間に立ったが、


「邪魔」


 短くつぶやき、その横を通り過ぎる。すれ違いざまにその魔族を腹から真っ二つにした。何かしらの障壁があったのか少し硬かったが、問題はない。ティアナに迫る魔族たちとティアなの間に立ち、驚く三人の真ん中で、ハルは剣を横に振り払った。


   ・・・・・


「さて……」


 全てがスローモーションに見える中、ティアナは呆然とその光景を見つめていた。ハルが剣を横に振り払い、それだけで両断される魔族の姿。魔族の体から血が噴き出しハルを汚すが、本人は気にせずゆっくりと振り返る。


「大丈夫? ティア」


 ハルに呼びかけられ、ティアナはぼんやりとしつつも頷いた。ハルはそう、と無感情な言葉を漏らし、小屋の方へと向き直った。ティアナもようやく我に返り、慌てて立ち上がってハルと同じ方を見る。タグラスは不機嫌そうな表情で、こちらをじっと見つめていた。


「どういう……つもり?」


 ハルが聞いて、タグラスが肩をすくめる。


「どういうつもりも何も……。俺も予想外だよ。魔族たちが出てくるなんて」

「よく言う……。あの魔法陣は、あなたの……魔法陣」

「いくら俺でも、怒るよ?」


 タグラスが目を細めると、途端に背筋に寒気が走った。隠そうともしないタグラスの殺気に、ティアナが体を震わせる。謝らないと、とティアナがハルへ促そうとすると、ハルはそれを察したのかすぐに首を振った。

 どうして、と思うティアナに、ハルは小声で言う。


「あの魔法陣はタグラスの物で間違いないよ。魔力の反応が同じだったから」

「反応……?」


 個人の魔力はそれぞれの特徴がある。それは学校でも教わることなのでティアナも知ってはいるが、それを調べるためには大きな施設で時間をかけて調べなければならない。少なくとも、この場で分かるものではないはずだ。しかしハルはティアナの言葉に頷くだけで、続けてくる。


「呑み込んで調べたから……間違いない」


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ではでは。

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