表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/49

2-15

 ティアナはそんなハルに何を思っているのかは分からないが、自身が前に出されることに抵抗はしなかった。むしろハルが望むならと、本当にこちらを見てくる人とハルの間へと動いている。


「……何やってるんだい、君たちは」


 それらの動きは、タグラスが戻ってくるまで続いた。



「今回の依頼は捜索、だね。東の森に遊びに行った子供が帰ってこないらしい。その子供の捜索依頼だ。もし誘拐といった犯罪に巻き込まれていた場合は、可能ならば犯人も捕まえること」

「それは騎士団の仕事だと思うんですけど……。どうしてギルドに?」

「騎士団も動いてるよ。ただ被害者の親の一人が、ギルドにも探してほしいと依頼を持ってきたらしい」


 街を出た三人は、東の森へと続く道を歩いていた。

 街を出る少し前、ハルはこの街と近辺の地図を見せてもらっていた。地図によれば、街の周辺は広大な草原となっているようだ。街の北側に海、東西に森、南に大きな山脈がある。ハルが暮らしていた魔の森は、南の山脈にあるらしい。その山脈を越えれば、別の街、というより国に行けるそうだ。

 ハルは二人の会話を聞き流しながら、背後の街へと振り返った。かなり大きな街のようだとアークに聞かされてはいたが、予想以上だった。まさか、街から出るための門へ行くだけで馬車で半日かかるとは思いもしていない。

 もっとも、あまりに不便であるがために、街の中心部と東西南北の門にはそれぞれを繋ぐ転移の魔法陣があるのだが。それを利用すれば、ほとんど一瞬だった。

 もう一つ、驚いたことがある。ティアナもアレンも、アークたちも街だと言うので気にしなかったが、どうやらしっかりとした国らしい。王様が暮らしているだろう城も確認することができる。あれほど大きな建造物に気づけなかったことに愕然としたものだ。

 イクス国。それがハルが先ほどまでいた街、というより国の名前だった。


「ハル君。聞いています?」


 ティアナに呼ばれて、ハルは我に返った・城へと向けられていた視線をティアナへ。ティアナはこちらを心配そうに見つめていた。


「聞いて……なかった。なに?」

「もしもこの依頼の、というよりこの事件の犯人が複数犯だった場合は、人数によっては何もせずに逃げることになります。一人であっても、相応の実力者ならその時にもう一度相談、ということで」

「うん……。まず見つかれば、だよね」

「見つけましょう」


 力強く宣言するティアナに、ハルは思わず苦笑していた。東の森は地図で見たところ、魔の森ほどではないがかなりの広さを持っている。そこから子供一人を見つけることがどれだけ大変だろうか。それとも、何か方法があるのだろうか。

 そんなことを、ハルはぼんやりと考えていた。



 草原を歩き続け、太陽がちょうど真上に来た頃に三人は東の森にたどり着いた。背の高い木々が立ち並ぶ様は、魔の森を彷彿とさせる。だが明らかな違いも当然ある。


「魔力、薄いね」


 魔の森と比べて、感じる魔力量は少ない。この世界の生き物にとって、空気中の魔力は必要不可欠なものだ。強大な力を持つ生き物ほど、周囲から取り込む魔力量は多い。はっきりと分かるわけではないが、東の森は魔の森の半分ほどの濃度すらない。


「はは、これで薄いと感じるのか。さすがは魔の森で暮らしていただけはあるね」


 タグラスの言葉に首を傾げるハル。ティアナが苦笑しながら教えてくれる。

「ハル君。魔の森が例外なだけですよ。東の森は他の土地に比べてまだ魔力濃度は濃い方です」

「これで濃い……?」


 正直意外だった。確かに魔の森で暮らしていたからそれが基準となっているのは認めるが、魔の森に来る前にいた『あの場所』はもっと濃かったことを覚えている。故に魔の森で標準か、むしろ薄い方と思っていたほどだ。


誤字脱字の報告、ご意見ご感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ