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2-6

 ティアナの責めるような視線が男を貫く。男はばつが悪そうにそっぽを向いた。


「ハル君は人と話すことに慣れていないので、あまり見ないであげてください」

「ああ、うん。だけどその子が、登録したいって言い出してだな?」


 え、とティアナが勢いよく振り返った。


「ハル君……。ギルドの仕事をしてみたいんですか?」

「多分……」


 ハルはギルドのことを当然ながらよく知らない。何でも屋、と評されたことから、依頼があれば何でもするようなものだと思っているのだが、推測の域を出ない。それでも、アークが勧めるということは、ここで働いてみるべきなのだろう。

 ティアナは少し悩むような素振りを見せたが、すぐにカウンターへと振り返った。ハルをその場に残し、カウンターへと走って行く。二言三言会話をしたかと思えば、ティアナは受付から何かを受け取るとハルの元に戻ってきた。


「どうぞ、ハル君」


 ティアナが渡してきたものは、こぶし大ほどの大きさの水晶玉だった。透明な水晶玉で、向こうが透けて見えるほどに透明度が高い。


「ギルドに登録するためには魔力測定が必要なんです。これに魔力を込めれば変色して、その色によってだいたいの保有魔力が分かるようになっています」

「込めれば……いいの?」

「はい」


 ハルは言われるがままに水晶玉に魔力を込めた。するとすぐに、水晶玉に色がつき始める。最初は薄い白色だったのだが、込め続けると今度は黄色になった。その変化を目にした周囲の人が、息を呑んだ気配が伝わってくる。


「どこまで込めればいいの?」

「込められるまで、です」


 ティアナはさほど驚いていないようで、むしろ期待に満ちた眼差しをハルへと向けてきていた。少しだけ照れくさく思いながら、魔力をさらに込めていく。水晶玉の色は、赤色になった。


「赤くなった」

「はい……。上級ですね。すごい……」


 感嘆のため息を漏らすティアナ。よく分からないが、どうやらこの変化はすごいことらしい。だが、まだ終わっていない。


「え……」


 ハルがさらに魔力を込めると、赤色がどんどんと濃くなっていく。ついには赤ではなくなり、完全な黒色になっていた。

 まだ余力はあったが、どうやらこれ以上は変化しないらしい。ハルは満足そうに頷き、少しだけ得意気に笑ってティアナへと顔を向けて、


「……っ」


 周囲の変化にようやく気づいた。

 周囲の人、カウンターの奥にいる人も含めて、口を半開きにしてハルを見つめていた。その瞳に映るものは、驚愕と畏怖。どうやら黒色にすることは、普通ではあり得ないことのようだ。目の前のティアナも、周囲と同じように凍り付いていた。


「ティア……?」


 不安になりながら名を呼ぶと、ティアナがはっと我に返り、何でもありませんと苦笑した。


「きっと上級くらいはあると思っていましたけど、まさか超級だなんて……」

「……?」


 やはりあの水晶玉の色の変化で魔力の何かが分かるらしい。ただ何を調べたのかも、どういった分け方をしているのかもハルには分からない。

 ティアナはハルから水晶を受け取ると、それをカウンターに持って行った。やはり呆然としている受付の人は、ティアナが目の前に立ったことですぐに我に返り、またティアナと少し会話をする。すぐにティアナが振り返り、手招きをしてきた。


「なに……?」

「登録の申請をします。ハル君、読み書きはできます?」

「できない」


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ではでは。

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