序章 その2
登場人物
○役割
○性格
○思考形態
【決めても良い内容】
○外見
○性別
○年齢
【決めなくて良い内容】
○名前
○好み
○趣味
○特別な素質や技能
古い黒板に次々にチョークで、浅田が劇の内容を決めようと上のような文字を書いていく。
だが、その黒板の前にいるのは半分
白目の俺とスマホと睨めっこ状態の美羽。
誰一人として劇の内容を真剣に考えていなかった。
時計の秒針を刻む音、浅田が黒板に文字を書いていく音、スマホのタップ音のみが響く教室。
「…お前ら真剣に考えろよ!? マジで怒るぞ!」
そんな中で突如、痺れを切らして怒り狂い出したのは浅田だった。
見れば、ゆでダコのように顔を赤らめている浅田がいた。
コイツは体格が良いので、本気で怒らしたら結構めんどくさそうだ。
「…そう言えば、今日って文化部希望の新入生が部室に来る日じゃなかったっけ」
「いや…そんなこと言ってる場合じゃないだろ」
浅田ガン無視で自身の長髪を指で弄りながら美羽は今思い出したかのように呟いた。
だが、今はそれどころではない。
すっかり目が冴えてしまった俺はとりあえず浅田に謝ろうと思い、めんどくさいなと頭を掻いたときだった。
美羽が言ったそばから、教室のドアが開かれて女が一人入ってきた。
「相変わらず纏まってないわねぇ~。まぁ今年出来たばかりの部活だから仕方ないのかなぁ」
この語尾が少し伸びたようなイラっとする話し方。こんな話し方をする知り合いは一人しかいない。
歳を隠す為の厚化粧が特徴の熟女教師であり、演劇部の顧問である柏木だった。
「相変わらず化粧濃いね」
「柏餅みたいに葉で年齢隠してんじゃね?」
「こそこそ話してても聞こえてるよ? エロ眼鏡君♪」
珍しくタイミングの合った俺と美羽の耳打ちに、柏木は薄い笑みを浮かべて反応してきた。
まぁワザと聞こえてるようにしているからバレても仕方ないけどね。
「…どうして俺だけ罵倒付きなんだよ」
悪態尽きながら俺は肘を付いた。
柏木とは高校一年から進路指導の教師で俺とは結構長い付き合いが合った。これだけのコミュニケーションが取れるのもその関係があったからだ。
…因みに、さっきのエロ眼鏡とは俺が過去に学校に持ち込んだエロ本を柏木にバレてパクられたことからそんなあだ名が付けられてしまった。
美羽に関しても、柏木と何があったか知らないが他の教師と違いかなり砕けた接し方をしていた。彼女が裏の顔で接している教師なんて見たことない俺は、最初はかなり驚いた。
「せっかく朗報を持ってきたのに、私にそんな態度とっていいわけ?」
「えっ? まさか、この部に部員入ってくんの? うわっマジ!?」
「うわっ、ってなんだよ? 自分が所属している部なのに」
露骨に嫌そうな顔をしている美羽に対して浅田は素早くツッコミを入れる。
柏木が「入ってきていいわよ」と、廊下にいるらしい人間に合図を送ると三人の新入生の生徒がずらずらと入ってきた。
まず驚いたのが、そのうちの一人が女子であったことだ。
確かウチの学校は女子生徒は今年入ってきた新入生を含めても15人程度くらいだった筈だ。
その少ない女子生徒の内、二人がこの自分のいる部活に入部しようとしている。
…いや、まだ彼女は部活の見学にきただけであって入部するかどうか判断するには早いか?
そんなことを考えている内に、柏木の先導によって新入生の自己紹介が始まった。
三人は浅田が譲った黒板の前に立って、こちらと対面する形となった。
まず一人目の男子生徒が自己紹介を始める。
(自分の専科とクラスを彼らは実際の自己紹介では言っていたんですが、ここでは説明がめんどくさいんで割愛します)
「吉本一馬です。先輩たちが僕たちの入学式のときに配っていた勧誘のチラシを見て興味があってきました」
彼の見た目は、簡単に言ってしまえば真面目そうな眼鏡をかけた好青年だった。髪も坊主に近い短髪で、人当たりも良さそうだ。
彼が言っていたチラシと言うのは、恐らく俺が書いた物のことを言っているのだろう。
実は俺たちの部活は正式には部活動ではなく同好会だ。設立したのは一年生の頃の入学して間もない俺と浅田だった。
「特に入りたい部活がこの学校にはない。けど部活動に入ってないと就職や進学に響くし、折角の高校生活を帰宅部で終えるのはなんだが虚しい」
そんな理由で生まれたのが、今俺たちがいる「演劇同好会」だ。
何故演劇なのかは、実に簡単な理由だった。浅田は小説のような物語を書くのが好きで、俺は舞台で我を忘れて何か皆で思い出を残せるような大きなことがしたいという希望があった。
そこから演劇をしようという結論になったのだ。
部員は当時、部活動を結成するための最低人数である五人。
俺と浅田が必死に集めてなんとか三人の男子生徒を集めることが出来た。
これで部員は揃ったということで、いよいよ部活動初の舞台、文化祭での演劇に取り組もうとしていた。
だが俺と浅田以外の三人は、途中で道を間違えたり、自然に部室に顔を見せなくなったりと、とても演劇の出来る状態ではなくなってしまった。
俺と浅田だけで演劇をするわけにもいかず、一年生のときの文化祭での演劇は断念することとなってしまった。
部員が二人しかいなくて、活動も満足に出来ない部活を教師人が見逃してくれるわけがなく、学校の文化部を統括する教師から
「来年の文化祭までに人数を集めて、演劇同好会の活動である演劇が出来ない場合は残念だが廃部にさしてもらう」
と、釘を刺されてしまったのだ。
長くなってしまったが、そんなわけで俺たちの部活は絶賛廃部の危機にある。
だから、さっき吉本が言ったチラシは、部員を確保するために俺が全力をかけて書いた魂の作品だったのだ。
それを見てここに来てくれた吉本を見て、俺は嬉しい反面、なんか照れくさい気持ちになってしまった。
続く…