邂逅
俺は彼女が大嫌いだった。
実は、俺は女という人間に対して偏見の目で見ている部分が少なからずある。
原因ーーというか、そのきっかけとなったのがこの美羽という人間だ。
美羽と俺の性格は、言ってみれば同じコインの裏表のように絶対に同じ方向を向かないーー真逆の性格だった。
美羽の性格は明るく前向きで、何事にもチャレンジしようし、積極的に前に率先して出て活躍する性格で、その上に陰湿な女子生徒間で起きていた虐めの被害者であるクラスメイトの女子を助けたりと正義感ある人間だ。
それに対し俺は普段から口数が少なく、積極的に前に出れない消極的な性格をしていた。良く言えば平凡な、悪く言えば特徴のない人間。
オマケに極度のコミュ障で口癖がめんどくさいの無気力人間であった。
彼女とは、中学のときに入学式でたまたま隣の席になって、猫を飼っているという共通の話題で盛り上がっただけである。
それからなんとなく一緒に連み始めたのだ。
そのときの彼女は、短髪で黒髪の大人しい…いわゆる清楚系? に見えた。
性格も明るく付き合いやすそうなタイプだなと思い、俺も学校生活の中で暇があれば彼女との会話の機会を作っていった。
そのときは意識していなかったが、それまでの人生でまともに異性と会話したのはコイツが始めてだった。
同性ともまともに会話が出来ない俺が唯一会話らしい会話を出来たのも、多分コイツの持っている雰囲気的な何かかもしれない。
だが、高校に入ってからの美羽は目を疑うほどに豹変した。
最初の入学してからの一年間はクラスや専科が違う為に、俺は彼女を学校で見かける機会がほとんどなかった。彼女の見た目の変化に気づいたのは二年に学年が上がり、クラスが一緒になったときだ。清楚系だった容姿は何処かへ行ってしまい、いかにも今時の女子生徒って感じを漂わせていた。
そして一番驚いたのが、彼女の持ち前であった真面目な明るい性格が彼女の表の顔になってしまっていたことである。
…言葉で表現するのが凄く難しいのだが、中学生のときの彼女は自分の明るい性格が本当の性格で、性格の裏表なんて微塵も感じさせなかった。
だが、今の彼女は学校内で教師の人間や生徒会に関わる行事のときのみ本当の性格を使い、それ以外の場面では序章2にも書いたみたいなぶっきらぼうな態度を取るようになった。
つまり、彼女は裏表の顔を持つ人間になってしまったようだ。
それを見た俺は何故だか分からないが、物凄く裏切られた気分になってしまった。
それが俺が女という人間に偏見を抱る引き金となった。
勿論、これだけの出来事で偏見を持ったわけではない。
それ以外にもあるが、それはまたいずれの機会に…。
次回から話を本編へ戻します。