初夏の頃 5
常務、特にご用がなければそろそろお昼にさせて頂いていいですか?
あっ、ああ。
ごゆっくり、どうぞ。
それじゃあ、すいませんお先に。
そうだ、午後から私と一緒に社長室に行って欲しいんだが。
社長室!ですか?
う、うん…
わかりました。
(なんだろ??)
お待たせぇ♪
おお、社内で噂の主がやっとご到着だ。
なぁに、それ!?
まあ、まあ。
こちらに、お掛けくださいませ。
先輩、私まで一緒にすいません。
いいのよ、どうせこいつ彼女もいないしお金余ってるんだから。
ひでぇ、言われよう。
注文は??
まだ、だけど。
すいませ〜ん!
鰻重のコース、特上を2つと……あんたは、どうするの?
俺も、一緒で‥
じゃあ、3つね。
くそう!こりゃ元がとれる位の話し聞かせてもらわなきゃ。
そんな、ご期待に応えられるような話しなんてないわよ。
そりゃ、あんまりだ!
まあ、まあ、特上なんてめったにお目に掛かれないんだから…
しっかり食べてからにしましょ。
ね♪美奈子ちゃん。
はぁ〜いっ♪
返事は、はっきり「はい!」でしょ。
でした♪
あのう、先輩と森高さんって…
ああ、それはね小野さん元恋人同志♪
バカ言ってんじゃないわよ!
単なる同期入社の、クサレ縁。
ホント、坂ちゃん俺には冷たいよなぁ。
冷たいんじゃないわよ、遠慮してないだけよ。
それってどうよ?
なあ、小野さんはどう思う?
えっ、私ですか!?
仲良さそうで、いいなぁ‥とか。
それは違うわよ、美奈子ちゃん。
単に、こいつのことは男として見てないってだけよ。
俺だって、世間では結構イケメンで通用してるんだけどなぁ。
あら、そう♪
初耳だわ。
先輩、ホントですよ。
社内の女の子にも、森高さんのファン結構いますよ。
ふ〜ん。そうなんだ。
だってさ♪良かったね。
それより今は、坂ちゃんの話し聞かせてよ。
まあ、ご馳走になっちゃったからしょうがないけどさ。
なにを話せばいいの?
とにかく全部!!
はあ!?
全部って!あたしのプライバシーはどうなるの。
だから、そのプライバシーを俺は、糸屋特上鰻コース3800円で買ったわけよ。
しまったぁ!
安売りしちゃったか。
と言うことで、あたしは今度のお見合いの報告をさせられた……
それで、坂ちゃん後はどうするの?
そんなのまだわからないわよ。
それが、一番大事なところなんだけどなぁ。
大事って、何よ?
い、いや、なんでも……
ちょっと、森高!あんたなに隠してるのよ!?
えっ、えっ‥‥‥
ははぁん、なんか頼まれたとか言ってたわね。
誰に頼まれたわけ?
正直に言わないと、あの事バラすわよ!
うわっ!それは卑怯な!
早く、喋りな!!
ウニャウニャの か い‥
なに!?聞こえない!
被害者の会‥‥
はぁ!?
坂山久仁子被害者の会。
なにそれ??
坂ちゃんに手酷くフラれた、社員の会。
うっわ!なに、そんな会あるの?
いや、俺が名付けた……
最低!あ〜〜もう最低!
美奈子ちゃん、仕事の時間よ。
帰ろっ。
えっ、あっ…は、はい!
それじゃ、森高またね。
ご馳走さま。
森高さん、ご馳走さまでした。
あららぁ〜食い逃げだぁ〜〜