初夏の頃
ご意見、ご感想などお気軽に頂けるとうれしいです。
あたしは、絶対に母のような人生は送らない。
小さい頃から、そう決めていたんだ。
誰かの日影で咲いてるような生き方は真っ平だ。
いつもそう、あの向日葵のように明るい日差しだけを見て生きるんだ。
おはようございます。
常務、今日のご予定は…………
初めまして。
坂山久仁子、25歳独身。
仕事は某輸入代理店の常務秘書。
自分で言うのもなんだけど、社内でも評判の美人秘書。
若い社員が言い寄ってくるけど、すべて無視。
だって、あたしに釣り合う男は一人もいないから。
あたしが見ていたいのは、あの太陽みたいに輝いてる男だけ。
そして、あたしは太陽に照らされて咲く向日葵。
坂山くん、ちょっといいかな?
はい、なんでしょう常務。
君、そのなんだ‥彼氏とかいるのかね?
あら、珍しい!常務がそんなお話しなんて。
いや、ちょっと人から頼まれてしまってな。
はあ…
もし、彼氏というか付き合ってる相手がいなければ………
お見合いしてみないか?
お見合いですか?
そうなんだ、私の知り合いの息子さんが何処かで君を見かけたらしくて
是非、紹介して欲しいと頼まれてしまってな。
別に今付き合っている人は、いませんが…
それなら、是非!
君も知っているかもしれんが、県会議員の笹山先生の息子さんで…
健之助くんと言うんだが。
33歳、京大卒業でゆくゆくは父親の地盤を継いで国会を狙う有望株だ。
はあ…
どうだい、悪い話しじゃないと思うんだが。
あたしは別にかまいませんが。
そりゃ、ありがたい。
先生には、我が社としても色々と…なんだから。
さっそく先方に連絡して、詳しい日取りを決めさせてもらうよ。
はい、わかりました。
いやぁ、良かった。
それじゃ、頼んだよ。
は、はい……
坂山くん、例の件なんだが今週の日曜日にどうかな?
例の件って?
笹山先生の…
ああ、お見合いの話しですか。
そうなんだ。
先方がすごく乗り気でなぁ。
とは言っても、あまり形式張ったお見合いではなくて
ホテルのレストランで、軽く食事でもしながらとの事なんだが。
あたしは、かまいませんよ。
その方が、かえって助かります。
そうか、それじゃぁ先方にそう返事しておくよ。
はい、お願いします。
それで、そのう…
当日なんだが、向こうは本人とご両親が来られると思うんだが…
あたしは、一人じゃダメですか?
母は京都だし……
かまわんよ、かまわんがだな…
君さえ良ければ、私が親代わりと言うことで同席させてもらおうかと…
あっ!そうですね。
それ、ありがたいです。
うむ、わかった。
その方向で、話しを進めさせてもらうよ。
よろしくお願いします。
初めまして、笹山健之助です。
初めまして、坂山久仁子です。
健之助、お前にしては上出来だな。
綺麗なお嬢さんじゃないか。
よろしくお願いしますよ、ご存知かと思うが笹山健一朗です。
はい、お名前はよく存じ上げております。
健之助の母です。
はい、奥様のお顔もよく存じております。
ハッ、ハッ!
選挙の時には、私よりもよくテレビに映るからなぁ。
あなた!
父さんも母さんも、少し押さえてね。
今日は、僕のお見合いなんだから。
わかっとるよ。
わかってます。
久仁子さん、気にしないで下さいね。
ただの土建屋の親父が、道楽で県会議員やってるようなものだから。
こら、健之助!
自分の親をつかまえて、なんと言う事を。
だって、ホントの事だし。
まあ、今日はお前の付き添いだから好きに言ってもらってかまわんが…
そういうこと!
えっと、久仁子さんの方は?
母親は、京都におります。
父親は、訳あっておりません。
兄弟もおりませんので…
坂山くんは、社内でも評判の美人秘書でしてな。
他の役員からは、いつも羨ましがられております。
常務!
まあ、うちの社内の若い者からも憧れの存在なんだが
なかなか彼女のハートを射止めるのは、難しいようです。
そんな、あたしは別に…
健之助、お前程度じゃムリかもわからんぞ。
やはり、男はわしのようにじゃなぁ…
あなた!
いや、これは失言じゃ!
すまん、すまん、母さん。
あなたは、その失言でいつも失敗してるでしょ。
わかっておる。
なにも、こんなところで説教を始めんでも…
おやっ!?
健之助アニキ、親父達も!!
揃って、何やってんの?
「「「健太郎!」」」