表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/27

寂しがりやの吸血鬼




 少女は訴えた。溢れる悲しみと優しさを歌に乗せて。


 少年は聞いた。王城から響き渡る、凛とした歌声を。










 思えば、あの時から僕は歌声の主に惹かれていたのかもしれない。


 自分が人の繋がりから離れたモノであることを嘆き、ありもしない望みを抱くために聖域へ通い続けていた僕は、王城から聞こえてくる寂しげな旋律にいつも安らいだ。


 歌声の悲しみが共鳴したのか、込められた優しさに惹かれたのか。いまはもうどっちだったか覚えていない。


 それでも、僕はその歌に焦がれていた。




 だから、驚いたのだ。河原で泣いている少女の声が、直に自分の心を揺り動かしたことに。




 河原の少女は、王城に住まう高貴な人間。


 自分が最も関わるべきでない人に、しかし僕は何故か言ってしまったのだ。



「こんにちは。どうしてこんなところにいるの?」



 少女は人間が嫌いだといって、人との繋がりを欲した。


 少女は人間が汚いといって、人との信頼を築きたがった。


 人の汚さを身を以て知っているはずなのに、それでも人間の優しさを諦めきれていなかった。


 それは、僕と同じだ。


 彼女は怒り、落ち込み、寂しがり、驚き……そして、笑った。


 彼女の感情に触れて、僕は涙を流しかけたものだった。


 ああ、まるで宝石箱みたいだな。


 色とりどりの彼女の表情を見て、そう思った。














 そう……僕は、彼女に恋をしていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ