【間奏】 ~人間として~
執筆を開始したわけでもないのに載せてみました。
ああ、ストックが無くなっていく……。
鬱蒼とした森。血生臭い匂い。木々も健康的な緑ではなく、どこか濁ったような色をしていた。王都の外れ。そこは、人間たちに「魔の森」と呼ばれている場所だった。
そこに一人の人間が倒れている。たくましい肉体と端がほつれた衣服。どうやら木こりらしいその男を見下ろすように、
「……」
一人の少年が立っていた。子供と言い換えても差し支えないその姿は、その年頃相応の無邪気さが全く感じられなかった。
その少年は、感情の読めない瞳で足元の男の青白い顔を見下ろして、口元の血を拭った。
男の命。体内に巡るエネルギーへと変換されたそれを感じつつ、少年はねぐらへと戻ろうとした。瞬間、近くの茂みでガサガサと音がする。
身体をビクッと反応させて逃げようとする少年。しかし、そこから現れたのは一人の老人だった。
老人は驚いたように目を大きくして、少年とその足元に転がる死体に順に目を向ける。これで老人には理解できてしまっただろう。少年が、人間に忌み嫌われた「アレ」であることを。
「……う……」
先日人間たちにつけられた傷に痛みが走るのを感じた途端、少年は後ずさりをした。
「心配するんじゃない。傷つけたりしない」
嘘だ。人間たちは俺を殺そうとする。
言葉を発した老人が信じられずに、少しずつ距離を取る。
それにどうしようかと悩んだような表情を見せた後、老人は思いついたように顔を明るくした。
「どうだ、わしの孫にならんか?」
呆然。そしてすぐに気を取りなおした。
「……どういう意味」
「最近仕事がどうも身体に辛くてな。手伝いが欲しいところだったんだよ」
「……だからって」
「言っただろう? 孫が欲しい」
そう言って少年に対して表情を変化させてみせる。その表情は、今まで見てきた人間の表情とは全く違うものだった。なんだか勝手に警戒心を無くさせられるような感じがした。
「……今まで辛かったろう? わしについて来なさい。守ってあげよう」
その言葉を聞いて、少年は、
「……後悔しても……知らない」
老人の小屋へと住むことが決まった。




