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プロローグ
桜の花びらが風に舞う。
通い慣れたこの桜並木でそれを眺めゆっくりと歩く。
クリーニングから返ってきたばかりの埃ひとつ付いてはいない制服で。
一片の花びらが真っ黒いブレザーの上に舞い落ちた。
手に取り、握り締め、再び開いてみる。
花びらはひらひらと空を舞っていった。
私は立ち止まり上を見上げてみる。
済みきってどこまでも青い空が見える。
さっきまで手にあった花びらは無数の花びらと交じり、
どこに行ったかわからなくなってしまった。
なんだか急に嬉しくなって私は走り出す。
新しい季節へ、
新しい今日へ、
新しい出逢いへ。
わけもなく恋の予感を感じた14の春。
あなたと出逢えた14の春。