婚約契約の見直しはお早めに
かなり短いですが、爵位的に令嬢が上の場合、幼馴染ネタって一発で退場するな〜と思いつき、書いてみました。
「婚約者がいる殿方に触れるなど、マナー違反となりますわ。ご注意くださいませ」
「そう目くじらを立てなくても良いだろう。彼女は幼馴染なんだ。許してやって欲しい」
私の注意にこう返したのは、私の婚約者であるフェルナンド。マーベル伯爵家の嫡男である。
そして、私の名前はジュリア。フォルク侯爵家の次女であり、彼との政略上の婚約者でもある。
先ほどの私の注意は、彼の横に座り、肩に手を置き、顔をすぐ近くまで寄せて話をしていた彼の幼馴染――男爵令嬢のミュリエッタに向けたものだった。
そして、ここは学園の食堂である。彼と昼食を取るために待ち合わせをしており、食堂にたどり着いて目にした常識外れの行動に、すぐさま注意を促したのだ。
大事なことなのでもう一度言うが、ここは学園の生徒たちが集まる食堂なのだ。
それに対する返事が、先ほどの彼の台詞である。
数秒の無言の後、私は「そうですか」とだけ言い、その場を後にしました。
そのまま職員室へ向かい、所用で父に会う必要があるため早退する旨を教師に告げ、侍女に馬車の用意を頼む。 教室に戻り学友たちに早退を告げると、教材の入った鞄を持ち、エントランスに向かった。
侍女がエントランスで待っており、すぐに馬車に乗ることができました。
「自宅へ」
一言告げると、馬車は動き出した。 有能な御者は、予定より早い帰宅にも素早く対応してくれる。馬車の速度も普段より速い。
ゆっくりと本日の出来事を反芻する。
婚約者が、
人が集まる学園の食堂で、
婚約者でもない女に体を寄せられ、
私が注意すると、 注意された女ではなく婚約者が、
「幼馴染だから許せ」 と私に告げた。
よし、ちゃんと記憶している。 問題ない。
馬車が侯爵家に到着すると、執事が予定より早い帰宅を不思議に思い、理由を尋ねてきた。
「問題が発生したの。お父様はご在宅かしら?」
「旦那様は、現在は王城にて執務中と思われます」
「手紙を書くわ。出来れば今日中に話しておきたいの」
「かしこまりました。お手紙を書き終えたらご連絡ください。早馬を手配しておきます」
私は頷いて自室に戻った。侍女が湯浴みを勧めてきたが、今は手紙を書く方が先だ。 湯浴みよりも手紙の用意を優先させ、その間に部屋着に着替えた。
手紙を書き終えて執事に渡すよう頼み、ようやく一息ついた。
湯浴みの準備を再開させ、埃を洗い流して目をつむると、ようやく深く息を吐き出すことができた。
自宅で学業を進めていると、お父様は夕食前に帰宅した。
エントランスで帰宅を出迎え、抱擁を交わす。
「話があると聞いて早めに帰宅した」
「はい。ですがこの時間ですから、夕食後にゆっくりと」
私とお父様は夕食を共にとり、食後に談話室へ向かった。
「お父様。婚約を白紙とさせてくださいませ」
お父様は一瞬、紅茶を飲む手を止めたが、そのまま一口飲んで尋ねた。
「理由は?」
「婚約者が、 人が集まる学園の食堂で、 婚約者でもない女に体を寄せられ、 私が注意すると、 注意された女ではなく婚約者が、 『幼馴染だから許せ』 と私に告げました」
馬車の中で繰り返した言葉を、そのままお父様に伝える。
「なるほどな」
お父様は、すぐさま執事を呼んだ。
「伯爵家に使いを出せ。婚約を白紙としたいと伝えろ」
お父様は、すぐに動いてくれた。
伯爵は妻を伴い、すぐさま侯爵家にやって来た。婚約者は連れて来ていなかった。
「侯爵閣下。婚約を白紙とはどういうことですか!?」
「ジュリア、話してやれ」
私は、お父様に話した内容を伯爵夫妻に告げた。
「婚約者が、 人が集まる学園の食堂で、 婚約者でもない女に体を寄せられ、 私が注意すると、 注意された女ではなく婚約者が、 『幼馴染だから許せ』 と私に告げました」
伯爵夫妻は驚いて言った。
「それだけで!?」
その言葉にお父様はため息を吐き、伯爵夫妻に問いかけた。
「お前達まで理解できていないとは……。どうする? 私が話すか?」
私は首を振り、自分で話すことにした。
「ご説明します。一つ目。 婚約者が誰であろうと、家族以外の女性と気軽に接触するのを許したこと。これは不貞となります」
「二つ目。 その行為を、あろうことか学園の人の目が多い場所で行ったこと。 これは婚約者である私への侮辱行為であり、フォルク侯爵家への侮辱行為となります」
「三つ目。 私が注意を促したのは、婚約者にまとわりついていた男爵令嬢です。しかしその注意に対し、婚約者が『幼馴染だから許せ』と言ったこと。 これは不貞を認め、さらにそれを見逃せと私に要求したことになります」
お父様が言葉を重ねる。
「上位貴族の婚約者でありながら、不貞行為を他者の目のある場所で堂々と実行し、あまつさえ婚約者を立てて注意をした言葉に対し、『許せ』と……。たかだか伯爵家の子息が、侯爵家の我が娘に言ったのですよ」
伯爵夫妻は青ざめ、震える声で言った。
「も、申し訳ありません! 息子には言い聞かせますので、どうかお許しください!」
私とお父様は顔を見合わせ、同時にため息を吐いた。
「この親にして、その子ありだな」
「ええ。ハッキリ申し上げましょう。私は十六歳になります。ご子息も同歳です。十六歳といえばデビュタントも終え、結婚もできる年齢です。貴族社会では大人として扱われます」
私は、腹に力を込めて言った。
「そんな年齢で、これほど常識外れの事態を起こした子息に言い聞かせてどうするのです? 真っ当になるまで待てと? 舐めているのですか? あなた方の教育の問題です」
「その通り。君達との付き合いも、少し控えさせてもらおう。書類はこちらで用意する。伯爵邸に届けるので、すぐにサインするように」
そうして伯爵夫妻は、ふらつきながら帰っていった。
「まさか伯爵夫妻まで理解していないとは思いませんでしたわ」
「白紙で済ませるのはこちらの温情なのだが……理解していると思うか?」
「そうですね。これから学ぶのではないでしょうか? 息子と一緒に」
お父様と二人で、クスクスと笑い合う。
さて、お姉様の子供を見に行ったお母様に手紙を出さなければ。初孫との出会いを邪魔するようで申し訳ないが、お母様もきっと納得してくれるだろう。 もしかすると、姉夫婦から新たな縁談をもらってくるかもしれない。
私は、婚約白紙をなんとも思っていない。政略結婚など契約と条件のやり取りである。そして、それは「信用」という価値のもとに成り立つものだ。 その価値が失われた契約に意味はない。政略とは、リスクを減らし利益を出さなければ意味がないのだから。
ならば、信用できない相手とは早めに距離を置くことが第一である。
契約の見直しは、早めに済ませるに限るのだ。
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本作はAI(Gemini)を利用し、校正を行っています。
基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。




