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パピヨン  作者: ミミ


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6/8

お星様になった

小学校の頃、御三家や山口百恵さんたち3人娘が大ヒットしていた。

ちょうど年頃でもあり、アグネス・チャンさんの『ひなげしの花』が流行った。

当時はハイソックスが人気で、私も真似してハイソックスを履いていた。


ある日、家の近所で見知らぬヤクザ者に声をかけられた。

その人は私に、「お姉ちゃん、セックスって知ってるか?」と聞いてきた。

私は帰って母に「ソックス?セックスって何?」と聞いた記憶がある。

母は黙ったまま、答えてはくれなかった。


母は家のことも仕事のこともそつなくこなしていた。

しかし相変わらず、飲んだくれて家庭を省みない父と、どこかギクシャクしていた。

その証拠に私は、父から新しい恋人の写真を見せられた。


母にこんなことを言うのはかわいそうだが、

私は母には思いやりやちょっとした優しさが欠けていたように感じていた。


ある日、父の友人という隣町の市長さんの息子さん(A氏と呼ぼう)が、

クラブで働いているホステスの女性と一緒に家に遊びに来た。

その女性は「ネクタイ屋をしている」と言っていたので、私は納得していた。

どうやらA氏の彼女らしい。


二度目に来たときは、夜で、**私と同い年の女の子(小学校3〜4年生)**を連れて来た。

私はいつもたくさんの本に埋もれていたが、その日は父の元で働くお姉さんからもらった『不思議の国のアリス』を読んでいた。

大人びた単行本で、私には少し難しかったが、アリスの世界は本当に不思議で、時に怖いとさえ思うほどだった。


私はよく母の三面鏡に顔を入れて、三角のようにしてどこまでも続く顔の連鎖を見ていた。

「これって、現在・過去・未来ってこと?」

そんなことを考えながら、指輪の中に入った小さな女王アリを思い出した。

その頃、私はアリに興味を持っていたのだ。


話を戻すと、

私と同じようにロングヘアーの女の子――アキちゃんと呼ぼう――

どこか寂しげで、はかない雰囲気を持った女の子が家に来てくれた。

太陽を浴びて真っ黒になった自分の肌とは対照的に、アキちゃんの肌は真っ白だった。

家に来てくれたことで、私は自然と心を開いていた。


少し話をして、帰りに県庁の右と左で写真を撮った。

その女の子は、以前見覚えのある、A氏の彼女の娘さんだったらしい。

どうやらA氏は、彼女と恋をして結婚まで考えていたらしい。


その後、母と父とA氏の彼女と一緒に、彼女の育った街で鵜飼いの船に乗って遊んだ。

私も連れて行ってもらった。


だが、父が他界する数か月前――

奇妙なことに、このお金と名誉のあるA氏は、自宅の水産業の冷凍庫の中で、覚醒剤を使用した状態のまま眠るように亡くなっていたらしい。

彼女と籍を入れてすぐのことだった。


衝撃的なニュースに、私は驚いた。

父の親友だったから…。


父とA氏は、これからどうしたかったのだろう。

この街を、この経済を、取り組んでいくつもりだったに違いない。

そして大きな2つの、県と市の議会が動く注目の2人であったはずだ。


A氏のお葬式が終わった直後、私の父も他界した。

私は、父と入るのが「これが最後のお風呂だ」と思っていた矢先だった。

お風呂の中で、湯船に浸かっていると、父はズブズブと沈んでいった。

それが父と本当に最後になってしまった。


母と二人でお風呂場から、父を引っ張り出して畳の部屋まで引きずり、救急車を呼んだが、間に合わなかった。

一晩病院で待っていたが、次の日私は家に返された。


朝から、ただボーっとしてテレビの漫画――アメリカ版の『トムとジェリー』や『ポパイ』――を見ていた。

ただボーっとして、気分は最悪だった。


父が死んだ。

その言葉に耳を疑った。


すぐに病院に駆けつけたが、足の裏が八の字に開き、温もりはあったが、父はピクリとも動かなかった。

原因は、お酒の飲み過ぎによる脳溢血だった。


お別れの言葉を何一つ交わせなかったのが、いちばんつらかった。

一言でも声を発してくれていたなら、私はその言葉を一生守って生きただろう。


翌々日、お葬式。

父の兄が寺を手配し、総勢400名以上が参列してくださった。

しかし母は涙ひとつ見せず、私にも何も言わなかった。

私は「強くいなければ」と思う気持ちだけが残った。

涙を見せてはいけない。

そんな思いでいた。


私が大切にしていたすべてを手放し、慣れ親しんだ洋館を何一つ持たせてもらえず、後にした。

六畳一間の安アパートに引っ越すことになった。


お葬式の直後、親族たちの中から笑い声が聞こえたのが、憎かった。

お葬式とはそういうものだと知らなかった私は、怒りを露わにしていた。


お歳暮で一部屋埋まっていた私の“裕福な一面”。

「これからという時に…」という声が大きく聞こえた

その夜、私を励ましに来てくれたのは、ハルちゃんという、それほど親しくもない女の子だった。

ハルちゃんはこう言ってくれた。


「お父さんは、星になったんだよ。」

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