表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パピヨン  作者: ミミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/8

パピヨン

蝶は、偶然そこにいたのではない。


55年前の寝室。

ダブルベッドの後ろの壁。

一枚の写真の中で、時は止まっていた。


耳に手をやる女性。

静かな視線。

あぐらを組んだ足の、その中心。


——一匹の蝶。


子どもだった私は、

ただ「不思議だ」と感じていた。

なぜ、そこに蝶がいるのか。

なぜ、その姿が記憶に焼き付いたのか。


大人になっても、忘れなかった。


蝶。

パピヨン。


ひらひらと舞う、儚い命。

だが同時に——

変化と再生の象徴。


そして、もう一つの意味。

フランス語で「蝶ネクタイ」。


首元で結ばれる、小さな蝶。

格式。舞台。演技。

人前に立つ者の印。


記憶の糸が、ゆっくりと結ばれていく。


あの写真の蝶は、

ただの装飾ではなかったのではないか。


幼い私に残された、

未来への暗号。


蝶は、変身の象徴。

さなぎから羽化する存在。


ならば——

あの蝶は「目覚め」を示していたのか。


眠っていた意味。

閉じられていた記憶。

封じられていた自分自身。


羽が開くとき、

点は線になり、

線はやがて、ひとつの姿を形づくる。


パピヨン。


それは写真の中の蝶であり、

記憶の中の違和感であり、

そして——


まだ言葉にならない

“私という存在”の象徴だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ