終焉の対決
血と炎に沈む戦場。その中心で、二つの影が向かい合った。
ルクシアとノクティア――共に人の手によって作られた、戦いのための妖精使い。
彼女たちの妖精は悲鳴をあげるように顕現し、互いにぶつかり合った。
大地は震え、空気が裂け、歌声が悲しみの旋律を奏でる。だが、その旋律はすぐに憎悪と怒りに呑まれ、やがて「歌」とは呼べぬほどの、耳を裂く轟音へと変わった。
「ルクシア……お前の父は、我らを実験台にし、呪いを植え付けた!」
ノクティアの叫びは、憎しみと痛みで震えていた。
「お前の力も同じだ……呪われた力だ! 被害者だとて、存在してはいけない!」
ルクシアは息を荒げ、短剣を握る手に血が滲む。
「……わたしは……父とは違う……!」
だがその声は、戦場の轟音にかき消された。
ノクティアの妖精は姿を歪め、怪物のような影となる。
それに応じるように、ルクシアの妖精もまた、苦痛にのたうちながら怪物の相をとった。
二人の周囲は異次元のように歪み、兵も仲間も近づけない。恐怖の圏域――ただ二人だけの地獄。
「だから今ここで……お前を殺す! 妖精を自由にするために!」
ノクティアの咆哮と共に、黒い影がルクシアを呑み込もうとした。
刹那――。
天空から閃光が降り注いだ。隣国の新兵器が、ノクティアに狙いを定めたのだ。
ノクティアの身体は閃光に貫かれ、血と肉が空へ散った。
その瞬間。
ルクシアの顔に、温かくも冷たい飛沫が降りかかる。赤黒い血肉が肌を汚し、彼女は呆然と立ち尽くした。
だが、ルクシアの瞳には――別の光景が映った。
ノクティアの妖精が、怪物の姿から解き放たれ、ほっとしたように微笑み、消えていく。
「…………」
ルクシアの妖精もまた、怪物の相を解かれ、元の柔らかな光の姿に戻っていた。
二体の妖精は視線を交わすように寄り添い、声なき声で何かを伝え合った。
やがて、ノクティアの妖精は静かに消滅した。
残ったのは血に染まり呆然と立ち尽くすルクシアだけだった。




