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辺境の屋敷の訓練場。

「では、やってみせよ」

辺境伯の声が響く。ミリアは一歩前へ出た。


静かに歌いはじめた。

手に持った短剣が光りを放つ。

それを胸に取り込んでいく。

光が胸に吸い込まれると同時に赤い鮮血のようなドロドロしたものが体をつたっていく。

すると背中から何かが溢れ出した。それは形となり大きくなり人に似た形になっていった。

その形が唸るような金属と金属をこすり合わせた時のような不快な音を出し始めた。

すると周囲の空気が低く唸り波打った。


叫びのような声とともに、異型が吐き出される。 それは弦のように伸びていき地を滑るように疾走し離れたところにある岩石を一撃で粉砕した。


それを見たルクシアは、目を見開いたまま動けなかった。

「……すごい。……」


その瞬間、ミリアの目に涙が浮かぶ。

褒められることが、こんなにも嬉しいなんて――。


厳しかった祖父の修行も、剣を持たされて男のように扱われた日々も、全部意味があった。

彼女の胸には、ただ一つの想いが燃え始める。


“この人のためなら、私は……なんでもできる”

ミリアにとってルクシアは幼い頃のまだ両親がいた頃の幸せな思い出だった。

あの日父と母はミリアの手を取ってルクシアの歌を一緒に聴いていた。

ほんのわずかな楽しい思い出。

ルクシアの歌は、存在はミリアにとって幸せだった時の大切な思い出。

その時のルクシアの幸せそうな顔と優しい歌声はミリアの希望になった。

またきっとルクシアの歌を聴けたら幸せがやってくるかもしれない。

ミリアはそう思いながら厳しい祖父に耐えてきた。

それがやっと報われる。ミリアにはこれからが幸せの始まりに思えていた。


それからの日々はルクシアとミリアには修行の日々だった。

その間に2人は互いに少しずつ心を開いていった。

最初はよそよそしかった2人も、今では時おり年相応のように笑うようになった。


ルクシアも、同年代の友達など一度もいなかった人生に、初めて訪れた温かさに、戸惑いながらも少しずつ心を許していた。


ある夜、並んで星を見上げていたとき、ルクシアがぽつりと呟いた。


「私、今まで一人だったから…仲間とか、同志?こんな感じなのかもって思ったの。あなたといると」


ミリアは小さく笑った。

「私もです。ルクシア様」


星の瞬きが、ふたりの小さな灯火を包んでいた。

こうして、ルクシアとミリアは、戦いと祈りをともにする“きょうだい”になったのだった。


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