《セレナとタキタの最期の戦い》
セレナのいる遊撃隊は森の中を進んでいた。
国王軍を側面から強襲するためだ。
ところが、国王軍も同じように側面の強襲を実行していた。
先に相手を見つけたのはセレナ達だった。
ここで勝ったほうが、全体作戦でも勝てるのだ。
セレナ達遊撃隊は攻撃をしかけた。
国王軍の方には、タキタがいた。
二人は衝突する。
瓦礫と炎に覆われた城塞の回廊。
赤黒い炎の中、二つの影が激突していた。
「裏切り者がッ!」
タキタの叫びが、刃と刃の衝突に重なる。
「同じ血を持ちながら、王族に媚びてその犬に成り下がるとは!
おまえは一族を売った恥だ!」
「……」
セレナは反論しなかった。
彼女の瞳は、燃え盛る天井の向こう――空虚な未来を見つめていた。
タキタの罵声が続く。
「おまえのせいで我らは滅んだ! その血を汚すために生まれたのか!」
セレナは静かに唇を開いた。
「……一族がどうとか、王族への復讐とか、もうどうでもいい。
私が望むのは――こんな戦いも、妖精の使いも、すべて終わらせることだけだ」
その声には怒りではなく、鋭い拒絶の力があった。
「ルクシアも、おまえも、私自身も……この世に残るべきじゃない。
妖精を縛り、武器にする存在は、すべて滅ぶべきなのよ!」
タキタの瞳に戦慄が走る。
「狂ったか……!」
次の瞬間、セレナの身体を斬撃が裂いた。
鮮血が飛び散り、膝が崩れる。
それでも彼女の瞳は、揺らぐことなくタキタを見据えていた。
「……そうね。もうすぐ終わる」
セレナは震える唇で、詠唱を紡いだ。
『恐れることなかれ…今こそ大いなる黎明の時――!
わが血と肉をもって、闇を屠れ!』
彼女の身体から血肉が引き剥がされ、赤い光が舞い上がる。
妖精の姿が浮かび上がり、セレナの身体と一体化していく。
だがその妖精の姿は、美ではなく、絶望と苦痛に歪んだ怪物のものだった。
タキタは恐怖に目を見開く。
「まさか……それは……!」
黒と赤の渦が爆ぜる。
タキタとその妖精は叫びを上げる間もなく、その渦に呑まれ――跡形もなく消滅した。
――その時。
耳をつんざくような断末魔の音の中に、
かすかな旋律が紛れ込んだ。
誰の歌ともわからない。
ただ、泣き声のようであり、子守歌のようでもある旋律。
消えていく妖精たちの声が、
悲しみと安堵を一つにして響いていた。
やがて光が収まり、目に映るのは白骨だけ。
セレナの剣は、その亡骸を支えていた。妖精の影も、すべて消え去っていた。
国王軍はタキタの消滅を見て、怖気づいたのか退却をはじめた。
セレナを失っても反乱軍は作戦を続行して、とうとう国王軍の側面に強襲をかけた。
これは成功して反乱軍は国王軍を撃退した。
遊撃隊からセレナのことを聞いたルクシア達は戦闘のあった場所へと急行した。
ルクシア達の目に飛び込んだのは沢山の兵士の死体とそのなかでまるで膝をついてるかのようにしている白骨だった。
その白骨は地面に剣を突き刺して支えているようにみえた。
「……セレナ……?」
リレアはその場に崩れ落ちてただその白骨を呆然と見つめていた。
フェルヴィアは目を背けながらリレアの肩をしっかりつかんでいた。
ミリアは血に濡れた剣を支えに大きく肩で息をしながらなにが起こったのか理解しようとしていた。
ルクシアは立ち尽くし、胸の奥で決意が固まっていく。
――私たちも、世界に残してはいけない。
私たちの力は、妖精を苦しめ、時代を狂わせるだけ。
終わらせなければ。
その決意は、炎よりも冷たく、彼女の心を貫いた。




