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冷たい会合 伯爵と隣国の使者の会話



◆地下会議室──夜、石造りの密室


蝋燭の灯りだけが壁の絵画を照らしている。

天井は低く、声はよく響く。空気は湿り、沈黙が深く根を張っていた。


伯爵は黒い手袋を外し、重々しく椅子に腰を下ろした。


向かいには、隣国エルダレクの使者が座っている。銀髪の老齢の男。

長旅の疲れは見せず、手には巻物と金の印章。


「――殿下を、前に出すのは危険すぎませんか?」

使者の声は低く、よく研がれた刃物のようだ。


伯爵はゆっくりとグラスに酒を注いだ。

琥珀色の液体が静かに揺れる。


「危険だからこそ、民が惹かれるのです。

彼女が戦場に立つ姿こそ、彼らの正義の証明です。」


「……まるで、聖女扱いだ」


「そう。都合の良い“偶像”なのです。

だが……」

グラスを傾ける伯爵の目が細まる。


「彼女の命が必要なのは“今”だけです。

“その時”が来れば、別の駒を探せばいい」


使者は目を細める。何も言わずに巻物を差し出した。


「これは兵器の追加供与と、砲の実戦投入条件。

妖精の時代を終わらせる火力。御国もご理解いただけるはずですな」


伯爵は巻物を受け取り、机に軽く置いた。


「理解しているとも。

“妖精と魔術の崩壊”は我々の目的でもある」


「では、姫殿下のご健闘を祈ります――いや、“ご消耗”の方が適切ですか?」


伯爵は笑わなかった。ただ、言った。


「ルクシアは王にはならない。……その器ではない。

だが王女である今、あの子は、剣より強い」


蝋燭の火が揺れ、二人の影が壁に伸びた。


「……ルクシア殿下の命も、あくまで“戦を制するための一手駒”。」


「――その通りです。」


そしてまた、静寂。


地下室の重たい扉が閉じたとき、会話の名残も冷気とともに吸い込まれて消えた。


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