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音の妖精の祭典



白い花びらが舞うように、光が降り注いでいた。

王都の広場を埋め尽くす群衆の上に、きらびやかな舞台が輝いている。

そこに立つのは、まだ幼い少女――ルクシア。

金糸のような髪を飾り、薄絹のドレスをまとい、歌うたびにその声は空へ溶けていく。


澄みきった音色が風を伝い、まるで目に見えぬ翼をもった何かが彼女の周りを飛び交うようだった。

観客の中には、確かに見えた者もいた――小さな光の粒、音の妖精たちが舞い降りて、少女の歌を祝福しているのを。

ルクシアの声は、妖精の加護を受けてひときわ輝きを増した。


「すごい……!」

人混みの中で、ひとりの幼い少女が息をのんでいた。

栗色の髪に澄んだ瞳――ミリア。

両親の手をぎゅっと握りしめ、まるで夢を見ているようにルクシアを見つめていた。

その瞳には驚きと憧れ、そして……心の底からの喜びが満ちていた。


歌が終わると、群衆は歓声を上げ、花びらのような拍手が広がった。

ミリアは両親の方を向いて、顔を輝かせて言った。


「わたしも――ルクシア様みたいに歌いたい!」


母は優しく笑い、父は誇らしげに頷いた。

「きっと歌えるさ。ミリアの歌も、きっと妖精たちが祝福してくれるよ」


その言葉に、ミリアは胸を膨らませ、空を見上げた。

あの光の粒――妖精たちがまだ空を舞っているように思えた。


だが、それからそう遠くない未来。

その光景は、ミリアの中で記憶の中の最後の幸福になった。


突然の病で両親は亡くなり、ミリアは祖父セルヴァーナ伯爵に引き取られた。

伯爵は少女の中に“妖精の祝福”があると見抜き、その歌声を「家の誇り」として利用し始める。

来客の前で、領民の前で――ミリアは歌った。


歌うたび、妖精たちは確かに舞い降りた。

人々は涙し、笑い、祝福のように花を投げた。


けれど、そのたびにミリアの胸は冷えていった。

――この歌は、もう両親のための歌ではない。

誰かの望むままに、ただ響くだけの音。


そしてその頃、王国では新たな命令が密かに下っていた。

「音の妖精に祝福された者を、“戦う器”に転じよ」


国王の名のもとに、“妖精”は兵器と姿を変えた。


幼かったルクシアはなにも知るわけはなかった。だが、人々は「国のため」と信じてその命を受け入れ、ミリアは祖父の命令によって“音の妖精を操る兵器”となった。


ミリアは覚えていた。

何人もの自分と似た年頃の少女達と一緒に王の前に連れて行かれたことを。

そしてそのあと妖精を使える体になったこと。

祖父や家臣や領民は祝福してくれた。

国を守る礎となると。

ただ祖母だけはそのなかにいなかったような記憶があった。

それから祖母はミリアを避けるようになった。

ミリアにはそれがわけがわからず、ただ祖母の態度が変わったことが悲しかった。

それからもその前も祖父は厳しかった。

だが一層激しくミリアは鍛えられた。

ミリアは祖父が怖くて必死に耐えた。


そしてあの華やかな舞台で人々に妖精と共に幸せを届けていた輝いていた少女たちが、妖精と共にいつしか“戦いの歌姫”として、血と炎の世界へ導かれていった。

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